大日本古文書 東大寺文書十四

本冊は、東大寺図書館架蔵文書のうち、いわゆる未成巻文書の続き、第五冊目である。
 本冊には、寺領部美濃茜部荘の文書のうち、前冊の残り八一点と、周防国衙領の文書八点の、計八九点を収録した。これにより、未成巻文書のうち、寺領部の1|1架から1|4架までの出版を完了したことになる。
 本冊でも、自署・花押等を便宜のため本文中の適切な箇所に網版で配置したり、参考のため適宜文書写真を挿入するなどの措置をとり、活字だけでは利用しにくい部分の翻刻に留意したつもりである。
 本冊に収録した史料のうち、第五八五号茜部荘・市橋荘堺相論文書案は、全十紙の巻子で、従来からよく知られ、利用されてきた文書であるが、その紙背文書九点は、すべて今回初めて紹介される平安時代末の書状類である。内容より考えて、当時東大寺所司としてその経営にあたっていた覚仁のもとに届けられた書状類であると推測できる。
 また第五五六号東大寺衆徒等連署起請文は後半部が東大寺から流出し、現在京都大学文学部博物館に所蔵されている(この文書の閲覧に際し今岡典和氏のご協力を得た)。この文書の後半部分を検索し、その接合を知る上で、永村真氏らの作業で完成した「編年東大寺文書目録(寺外流出分)」(『東京大学史料編纂所所蔵の影写本収載古文書検索システムの開発』)が役立ったことを付記したい。
 なお、後半の周防国衙領関係文書について、現地地名などに関して、山口芸術短期大学の田中倫子氏にご教示をいただいた。ここに謝意を表したい。
(例言二頁、目次一三頁、本文三一〇頁、価四、四〇〇円)
担当者 千々和到

『東京大学史料編纂所報』第24号 p.66*