東北大学附属図書館所蔵狩野文庫の調査

一九八七年十一月三〇日〜十二月三日に、前年度に引き続き東北大学附属図書館に赴き、狩野文庫の新見記録の調査をおこなった。
 今回は、前年度の調査により作成した一点ごとの目録(所報22号所収)にしたがって、史料の撮影を目的とした。その結果、新見記録一(絵図類を除く)、同二、同三、同四、同五、同六のすべてをマイクロフィルムに収めることができた。
 そのおりに、同館の所蔵で、「起文政十二年己丑八月十五日盡同年十一月 日記 新見」(別置伊4—三四九)という別置本(貴重書)を閲覧させていただいたが、これは、新見正路の大坂町奉行(在大坂)としての公用日記であり、本来は、新見記録五の24につづく性格の史料であることが判明した。「狩野亨吉氏寄贈」の印が捺されており、他の史料とは別に同館に受け入れられた結果、この一点のみが別置本とされてしまったようである。
 なお本所の貴重書のなかに、「中山前大納言正親町前大納言御対話一件」(貴32—26)という史料がある。同表題の小冊と絵図六枚からなるが、史料名からもわかるように、尊号事件関係の史料である。内容は、両公家が江戸で尋問を受けたさいに立ち会った目付の記録である。表紙に「新見」と書かれ、「源正登」という印文の朱印が捺されており、新見正登がのこした史料である(ただし、尋問のおこなわれた寛政五年に新見正登は目付ではないので、目付になってから他の目付から借写したものであろう)。書体、印、茶表紙の装丁など、狩野文庫の新見記録一に収められている他の新見正登のものとまったく同一である。つまり、本来は新見記録一に含まれるべき史料であったものが、なんらかの事情でこの一点のみが本所の所蔵となった模様である。
                             (藤田覚・佐藤孝之)

『東京大学史料編纂所報』第23号