東北大学付属図書館所蔵狩野文庫の調査

一九八六年九月一六〜二〇日、一九八七年三月一〇〜一三日の二回にわたって東北大学付属図書館に赴き、狩野文庫の新見記録の調査をおこなった。
 新見記録は、同館の目録によると、狩三—五二六一—三三六、狩三—五二六二—六、狩三—五二六三—四〇、狩三—五二六四—六四、狩三—五二六五—一二、狩三—五二六六—一五、狩三—五二六七—二二、以上の七種、四九五点となっている。今回の調査では、この新見記録の内容を把握するため、一点ごとの目録を作成することを目的とした。
 新見記録は、旗本新見家の史料であるが、おもに正登・正路の二代にわたる史料である。正登は、寛政五年に小十人頭、同七年から十二年まで目付となっている。正路は文政六年に目付、同十二年に大坂町奉行、天保二年に小性組番頭格奥勤、同七年に家定付の御側御用取次、同十二年に家慶付の御側御用取次となっている。目付・大坂町奉行・御用取次の職務にかかわる公用日記・諸書留が、新見記録の中心である。目付・大坂町奉行・御用取次の日記は、他に類例をみないものであり、また、その職掌にかかわる書留もほとんど類例がなく、幕府政治研究のための貴重な史料群である。
 旗本新見家に関しては、青木美智男「旗本新見家に残された天保十二年三方領知替中止をめぐる史料」(『神奈川県史研究』十八号)がある。この新見記録を使った研究としては、本間修平「寛政改革期における町方取締りと目付の『町方掛り』について」(『法学』四二巻三号)、同「江戸幕府目付に関する一考察」(『法学新報』九一巻八・九・十号)、藤田覚「新見伊賀守正路日記と三方領知替中止前後の幕閣」(本所報十一号)などがある。
 以下に、一点ごとの史料名と若干の概要を掲げる。
新見記録 一(狩三—五二六一—三三六)

『東京大学史料編纂所報』第22号