陽明文庫・栗田文庫の史料調査・撮影

昭和六十年十一月廿五日より廿九日までの五日間、京都の陽明文庫及び名古屋の栗田文庫(廿五・廿六日)に出張し、近世史料の調査・撮影を行なった。陽明文庫では、前年に引続いて「陽明文庫分類目録 家門篇」に拠って調査を進め、今回は「三、家領」に分類されているもの、架番号四二六〇より四六四二まで、都合三八二点、マイクロフィルムにして一〇〇フィート三函を撮影した。
 栗田文庫は、古典籍、古地図の収集に努め蔵書家としても生前より令名の高かった、近世史の大家・栗田元次氏旧蔵の文庫で、その総体は栗田元次編『栗田文庫善本書目』(昭和十五年五月刊、日本書誌学大系8『書誌学の発達 附栗田文庫善本書目』として復刻、昭和五十四年九月刊、表裳堂書店)によって知られるが、御令息憲次様のご説明では、昭和二十年に広島市で原子爆弾によって自宅全焼の際にかなりの量が焼失し、現存するものは、翌年に広島文理大学より第八高等学校長に赴任のため広島より名古屋に転居の折りに、疎開先より引取られたものとのことである。因に、例の善本書目の書名索引によれば約六六〇余点が登載されているが、現存するものは二七〇点である。格別の御高配により多くの貴重な史料を調査・撮影することができた。深謝申し上げたい。なお、撮影史料目録を次に掲げる。

『東京大学史料編纂所報』第21号