長崎県下幕末維新期史料調査

維新史料室は、一九八五年十一月十一日から十五日まで、長崎県立長崎図書館、諫早市立諫早図書館、大村市立史料館を訪れ、幕末維新期史料の調査をおこなった。
一、長崎県立長崎図書館
 この図書館でおこなった作業は、諫早日記と神代鍋島家文書の幕末期のものの内容調査、文書課事務簿・外務課事務簿など明治初年の諸史料の内容調査、通詞の志賀家文書の調査および撮影である。
(諫早日記)
 諫甲家は佐賀本藩鍋島家の御親類同格にあたり、同家史料の大部分は長崎県立長崎図書館の諫早文庫に、一部が諫早市立諫早図書館に収められている。諫早文庫の目録は、『県立長崎図書館郷土資料目録』下巻の中にある。諫早文庫の大部分は日記であるため、今回の調査は、幕末期に時期を限った上で、各種の日記の、それぞれの性格を把握することにつとめた。日記の架番号は、全て19—15である。なお、目録への記載はないが、日記の各冊には、アラビヤ数字で年代順の通し番号が付してある。
○佐賀詰用人日記
  佐賀の諫早邸で用人が記した日記。表紙の左端に、「中将様斉正公御在府檀那様武春公御当番年」とか、「殿様茂実公御在国、大殿様斉正公御在京三月九日御下国、檀那様武陳公英艦之都合ニヨリ三月六日ヨリ御在邑」とか記してあるものが、これにあたる。諫早領主が佐賀に詰めている時は「御当番」、諫早に戻っている時は「御非番」で、これも表紙に記載がある。佐賀にいる時の諫早領主の動静、本藩からの達、諫早領主からの本藩への上申、諫早請役所からの領主への伺いなどが、主な内容である。

『東京大学史料編纂所報』第21号