大日本史料第八編之三十三

本冊は、後土御門天皇延徳元年雑載と、二十六〜三十二の七冊に対する補遺とから成る。
年末雑載は、その最末部分で、荘園・所領、寄附、売買、貸借、譲与、契約の項に分類した社会経済史料を収める。これらの諸項には、長享二年に引続き、北野社・松尾社・住吉社・東寺・大徳寺・相国寺・興福寺以下の社寺領と、近衛家・二条家・三条西家・山科家などの公家領に関する史料が多いが、之に加えて五二頁にわたる賀茂別雷神社採訪史料を収録しえたのは、八編雑載編纂史上画期的な出来事である。このほか兵庫県史から天城文書・栗花落文書を収録した。また写本類のない東京大学文学部所蔵長福寺文書は、石井進教授の御配慮により原本校正することを得た。
補遺は、新採訪史料と遺漏史料によって構成した。延徳元年分史料は、昭和三十八年一月三十日発行の二十六に始まり、同六十年十一月三十日発行の本冊をもって終結するが、この間約二十四年の歳月を要し、且編纂・出版に力をつくされた玉村竹二・稲垣泰彦・百瀬今朝雄の三先輩も室外に去られた。
この二十余年の期間は、各地域の史料の発掘・紹介および刊行の促進された時期であり、八編関係新採訪史料も多数入架されているが、全面的調査の暇はなく、延徳二年分史料編纂中に気付いた史料のみを補入した。また八編は記録材料の多い特性を有し、その切り貼り編纂の途中、窓外の風と共に去ったと思われる遺漏史料も少なくなく、これも併せて補入した。
前者の代表的なものが、京都大学文学部国史研究室所蔵勧修寺家文書、南禅寺文書(写真帖)、国立国会図書館所蔵葛川明王院文書、広島大学文学部所蔵大乗院記録紙背文書、天理図書館所蔵連歌、福智院家古文書などであり、後者のそれは、蔭凉軒日録、北野社家引付、実隆公記、政覚大僧正記、史料編纂所々蔵親王御方御会、東寺文書などである。
尚、東寺文書観智院二は、後藤紀彦氏の御教示により補入した。
(目次一頁、本文四四一頁、補遺目次七頁、補遺本文一一〇頁)
担当者 小泉宜右・今泉淑夫

『東京大学史料編纂所報』第21号 p.38*-39