福岡県下幕末維新期史料調査

一九八四年十一月十一日から十七日まで、九州大学文学部九州文化史研究施設、福岡県立図書館、久留米市民図書館において、幕末維新期史料の内容調査をおこなった。
 一 九州大学文学部九州文化史研究施設
 同施設では、秋月黒田家文書を閲覧した。秋月黒田家文書の目録は、『九州文化史研究所所蔵古文書目録』第九集に収められている。今回、閲覧したのは、右の目録の分類にしたがえば、一江戸時代史料の中の4日記・記録、同じく一江戸時代史料の中の5行政・軍事のうちの(4)幕末維新、以上のそれぞれに含まれている幕末維新期の史料である。頭部に付した番号は、目録では史料名の下に( )に入れて記してある整理番号である。
 「御記録」および「記録」は、嘉永六年以降のものに全て目を通し、史料の性格の把握につとめた。
 「御記録」はその表紙にあるように御記録所の記した記録である。明治三年からは、御記録所に代って藩政庁と記されている。各年の「御記録」は、上、中、下に区分してある。上は主に触留で、家老から目附頭へ充てた形式になっており、末尾は「右之通可被相触候」で結ぶ。中は藩士への達しと藩士からの届書や願書で、届書と願書の末尾には御用部屋の決裁の結果が記してある。下は寺社、郷士、町、在の四つの部分に分かれ、それぞれへの達しと、それぞれからの届書や願書が留められている。上・中と下とで二分冊になっている場合が多い。文久四(元治元)年の「御記録」から記載例を示す。なお、この年のものは、上・中の部にあたる「文久四甲子御記録」と、下の部にあたる「元治元年寺社在町御記録」の二冊からなっている。

『東京大学史料編纂所報』第20号