大日本古文書家わけ第十七「大徳寺文書之十三」

本冊は、まず、大徳寺本坊所蔵の古文書のうち、巻軸に装丁し別置された文書を収め、次に、丙・丁・戊・己・庚箱、および箱外文書の補遺を収めた。
別置軸装分の文書は、殆ど著名な偈煩・法語・印可状・制法などからなり、個々の説明を要さない。ただ、学界未知のものとして興味深いものに、長門国豊浦郡阿内包光名絵図(三二五一号)がある。この絵図自体の中には阿内包光名の名は現われないが、吉賀、光富(名)、員光(保)などの地名から嘉陽門院から絶崖宗卓に寄進された同名の絵図と推定されるものである。また徹翁義亨筆但馬国安養寺制法(三二四号)は、一般に大徳寺七ケ条制法とされるものであるが、地方寺院の制法として興味深い内容を有している。
なお各箱の補遺分の文書は、当然の事ながら既刊分の諸文書と関連し、両者を併せみることにより、新たな知見を得ることができるものが多い。ただ補遺という性格上、時代も関連地域も、あまりに区々にわたるので、個別の関説は割愛せざるをえない。
なお、本冊をもって、大徳寺本坊所蔵文書の採録は、全て終了した。
(例言二頁、目次一六頁、本文二七二頁、挿入図版七葉、花押一覧七頁、印章一覧二頁)
担当者 保立道久

『東京大学史料編纂所報』第17号 p.44*