大日本近世史料「編脩地誌備用典籍解題六」

本冊には、前冊にひきつづき、「異国紀」(上・下)より「遊紀目録国分」、「編脩地誌備用典籍解題附録」、「魯西亜阿蘭陀地名異称考」まで原本五冊分を収めた。本冊を以て本書は完結するので、巻末に索引を附した。
異国紀に挿入されている地図は、総紀、別紀と異なり、全て彩色の図であるが、便宜上単色印刷で示した。
「異国紀」上に収載された典籍は、万国三十点(内、図十点)、朝鮮十一点(内、図一点)、支那十六点(内、図七点)、〓蘭地四点。下には応帝亜五点、韃而靼五点(内、図二点)、魯西亜十点(内、図三点)、漂流紀二十一点である。異国紀には、新井白石の「采覧異言」五巻。それを山村昌永が増訂した「増訳采覧異言」十二巻、西川如見の「華夷通商考」五巻、山田聯の「北辺合考」九巻、近藤重蔵の「辺要分界図考」七巻、林子平の「三国通覧図説」一巻、朽木昌綱の「泰西輿地図説」十七巻、司馬江漢の「和蘭通舶」二巻、山田長政・天竺徳兵衛に関するものそれぞれ二種、間宮林蔵の「東韃紀行」三巻、桂川国端が蘭書を翻訳した「魯西亜志」一巻等があり、漂流紀には、安永九年村山有成序の「迷復記」十二冊、大黒屋光太夫との問答を記した桂川国瑞の「漂民御覧記」一巻、大槻玄沢の「環海異聞」十六巻等がある。巻末に本書編集の総裁間宮士信の跋語がある。
「遊紀目録国分」は、さきの遊紀解題の序次が、作者の年代によっていたので、国別検索の便宜のために作られたものである。以上の要旨を含めた三ケ条の凡例が巻首にある。
「附録」には、別記に収載洩れの九点(内、図一点)の解題がある。主なものに、大冊「新編会津風土記」百二十巻、富田景周の「越登賀三州志」二十五巻、高橋景保の「銅版万国略図」一鋪等がある。
「魯西亜阿蘭陀地名異称考」は、「采覧異言」・「増訳采覧異言」等、十二種の書籍から地名をとり出し、その異称が配列してある。その当時、両国の地名が、日本でどのように表記されていたかを知ることが出来、興味深いものがある。
巻末に附した索引は、本解題の対象となった典籍と、その成立に関する人名の索引である。
担当者 新田英治・山口静子・鈴木圭吾
(例言一頁、目次六頁、本文二九〇頁、索引四八頁)

『東京大学史料編纂所報』第14号 p.38*