大日本近世史料「幕末書物方日記十三」

本冊には、内閣文庫所蔵の『書物方日記』十二(元文二年正月から六月まで)・十三(元文二年七月から十二月まで)の二冊、計一年分を収めた。
 日記としての記載様式は殆んど定形化し、毎日の業務も整備されて来ている。天候も欠かさず記入され、地震を感じた日も年間十八日を数えることができる。書籍の校合は、日本後紀・中右記・園太暦が昨年からの業務として続行され、十一月に完了し、水戸本は返却され、水戸藩の依田処安にも拝領物の下賜があった。目録吟味は恒常的業務になったようで、この年は城絵図目録、地理書目録の点検、目録の修正がとり上げられている。書物庫の修理も、この年は西蔵が実施され、毎年注意深く書庫の管理は行われていた。書籍の出納では、前から引続き支那の府県志、特に物産志が頻繁である。また、厚薄二種の雁皮紙に虫害があるか否かの実験として、樟脳を使用しない試みを行ったり、『仁風一覧』摺立てをしたり、吉宗の意同が具体化する例がみられる。
 この年は、五月二十一日夜に家治が誕生しているが、正月十三日に、先例参考のために、『寛明録』の誕生之部に付札を附して上呈の命が書物方に達している。また、暫らく欠員であった同心の補充が行われ、二名の新任者があった。また、五月二十四日に老中からの御触書が順達された記事があるが、この御触れは、「組支配之事、御日記ニ可記義有之節、御目付・大目付江書付可出由之御触書也」であって、右筆方にて作成された幕府『御日記』の作成過程の一資料となる記事である。
(例言一頁、目次二頁、本文三〇一頁、人名一覧二六頁、書名一覧五三頁)
担当者 山本武夫・長谷川成一

『東京大学史料編纂所報』第13号 p.34