対馬宗家文庫調査(二)

昭和五一年十月十八日より同月二十八日までの間に、調査撮影を実施した。昨年度に収蔵状況調査、諸般の交渉、史料抽出作業を行い、それを基礎にして撮影蒐集を続行することができた。
 現地状況に対応して、人員を二班に分け、与えられた条件下で、できるだけ稼動日数を増加し、且つマイクロカメラ三—四台を常時作動させることにした。この間、昨年同様、宗武志氏の採訪許可、現地管理の津江篤郎氏の好意ある処理、撮影場所の提供並びに史料の移動搬送に尽力された町教育委員会には篤く謝意を表する。この種の規模の大きい蒐集には、現地の方々の理解協力があってこそ成果が得られるものである。一班山本・橋本・長谷川、二班村井・加藤(秀)で構成し、二班には特殊研究(「江戸幕府史料の調査」)による阿部が参加した。
 文庫は未整理状態であるが、一応旧藩時代の分類毎に積み重ねられている。(1)公義被仰出(2)上〓様方御連枝様方属(3)御祭礼属(4)御隠居所御屋形属(5)進上(6)御奉公出(7)御法事赦被行属(8)隠居家督跡式(9)新規被召出立身加増(10)学校等六十九項目に分類されていたと思われるが、現状は相当混雑し、整然として居らず、陶山訥庵ら家臣の大量の書状は束ねられて集積され、また、信使関係、御仕置類、奴婢関係、旅人関係(鉱山その他の理由による人口の出入)、はそれぞれブロック毎に架蔵されてある。
 毎日記は年代順に整理され、細目は後記の通りであるが、今回は撮影しなかった。
 典籍群は、藩校思文館時代の蔵書に藩主御手許本が入交って居り、書籍目録が数種伝存しているのは有用である。特に、『芸閣蔵』の蔵印のある朝鮮版(論語集註大全、易学啓蒙、李退渓文集、廉洛風雅集等)が多くあるのが特色である。
 宗家の家譜・代々実録は別置され、歴代藩主への将軍御内書、幕閣奉書も寛永以後慶応に至るまで保存されている。
 史料目録は未だ作成されていないので、次に採訪史料リストを掲げることにする。(山本)
 毎曰記(計二七九八冊)
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『東京大学史料編纂所報』第12号