日本関係海外史料「オランダ商館長日記譯文編之二(下)」

本冊は、前記『日本関係海外史料』譯文編の続きで、その第四冊、譯文編之二(下)(自寛永十四年一月、至同年六月)として、第八代商館長ニコラース・クーケバッケル在職期間中の公務日記の第二の部分、原文編之二所収の一六三六年一月一日より一六三七年八月八日に及ぶ二〇か月の記事の後半、一六三七年二月一日以降の訳文を収める。
 二(上)に引続き、本冊では、上級商務員ファン・ザーネンの帰着と同じ一六三七年一月三十一日商務員ハルツィンクがフロル号でトンキンに向け出帆した翌日から半年間のクーケバッケルの日記を収め、このなかでは、平戸商館の新倉庫築造、松浦隆信の死去、来航オランダ船による東南アジア情勢などが記されているほか、とくに一六三七年八月八日の條に収録された長文の前記ハルツィンクの航海記(四八〜一七九頁)は、越南地方における政情をつぶさに知る史料で、フランス語による抄訳本とその英訳本が刊行されたことがあるが、このたび始めて完訳が行われたものである。
 原文編之二の末尾に附載した上級商務員ヘンドリック・ハーヘナールの江戸参府日記(自一六三五年十二月十四日、至一六三六年二月二十六日)は、底本中には収録されていないが、バタフィア総督を経てアムステルダムの会社に送られた謄本があるので、その訳文を本冊の末尾(一八三〜二二一頁)に附載した。
 本冊の翻訳は金井が行い、永積洋子訳『平戸オランダ商館の日記』第三巻(岩波書店刊)四二八〜四五二頁、ディクソンの〔ヘールツによるフランス語抄訳からの〕英訳(日本アジア協会紀要第十一巻、一八〇〜二一五頁)、及び岩生成一「安南国の烏蘭国水軍救援国書について」(『東方学』二三)を参照し、かつ不明の箇所については本所の外国人研究員ヤン・ド・フリース氏に訊すところがあった。
担当者 金井圓・加藤榮一
(例言二頁、目次二頁、本文二一二頁、図版一葉)

『東京大学史料編纂所報』第10号 p.41**-42