菊地大樹を代表とするこのプロジェクトは、1998年より発足している。過去から現在まで、以下の通りいくつかの資金を得て様々な研究組織により展開してきたが、これらは相互に密接な関係にあり、あわせて「金石文プロジェクト」と総称している。

 

1 金石文プロジェクトの3つの目標

@ 歴史研究への金石文史料の貢献

 日本の歴史学においては、文献史料(紙に文字で書かれた史料)への関心が伝統的に強く、木札(木簡)や石・金属等に記された文字史料の活用が遅れている。このプロジェクトでは、このような史料を「金石文」(inscriptions)と総称し、歴史叙述への活用をめざしている。とくに、日本の金石文は宗教的な契機によって造立されたものも少なくないことから、従来の文献や大蔵経中心の仏教教理研究にも一石を投じ、歴史叙述にも応用してゆくことを第1の目標としている[菊地2010][菊地2017]

 

A 地域研究への金石文の貢献

金石文史料は、必ずしも研究機関・博物館・文書館・大寺院や旧家の文庫などに所蔵されているわけではなく、むしろ大半は地方小集落の路傍や墓地、小寺社や民家などにあり、全国的に分布している。したがってこのプロジェクトは、文献資料に恵まれない地域の歴史を金石文研究によって明らかにするばかりではなく、中央中心に進められてきた政治制度史(institutional history)に対して、地域史(local or regional history)の立場から歴史叙述全体を見直す豊かな可能性を開拓することを第2の目標とする。

 

B 金石文研究の国際的共有

 金石文はこれまでの日本研究の中で、日本以外の地域の研究者に必ずしも十分に注目されてこなかった。しかし、近年では英語圏地域、とくにアメリカで物質文化(material culture)を軸とした宗教文化研究が大きく進展し、儀礼具をはじめとするモノ史料への注目が急激に高まっている。このプロジェクトでは、こうした研究の進展をこうした関心とリンクさせることにより、日本の金石文をグローバルに開いてゆくことを第3の目標とする[菊地ppt.140315]

 

2 金石文の記録方法―拓本について―

@ 拓本とはなにか

 以上の研究の前提となる記録方法として、佐藤亜聖プロジェクトでは考古学的手法による実測図の作成を進めており、菊地大樹プロジェクトでは「拓本」(rubbing)に注目している。

拓本とは一般に、紙を対象物の表面に押し当てて上から色付きワックス・鉛筆・チョークなどを押し当ててこすり、彫り込まれた文字の凹凸を利用して紙の上に字形を記録する方法である(乾拓、J:kantaku)。一方日本では、中国で伝統的に行われてきた「湿拓」(J:shittaku)という方法を共有している。湿拓は紙を対象物の表面に置き、上から水分を含ませたうえで圧着し、さらにその上に油性の墨を載せてゆく[image1]。彫り込まれた文字のへこんだ部分に墨が付かないことにより白く残った字形(solid-white characters)を紙に記録する方法である。[image2]

 

A  東京大学史料編纂所所蔵拓本群

史料編纂所には、1930年代を中心に日本各地から収集された大量の良質な拓本が所蔵されている。加えて1999年以降、このプロジェクトの原型となった、東京大学史料編纂所附属画像史料解析センターにおける「金石文史料の整理と公開」プロジェクトによって、あらたに拓本の記録・収集公開を続けている。これを加えると総数は約2800点であり、このプロジェクトによってさらに収集が進めば3000点を越える可能性がある。このプロジェクトでは、まずこの拓本群を核として、全点の整理公開を進めている。

 

B 全国の拓本群

史料編纂所のような研究機関はもちろん、長年にわたって個人で地域の研究に取り組んできた多くの研究者によって、19世紀以来全国には多くの拓本が記録・蓄積されてきた(一部は江戸時代にさかのぼる)。しかし、こうした拓本群の多くは現状では研究機関や地域の個人管理下に埋もれているのが現状で、十分に整理活用されていない。そこでこのプロジェクトでは、いままで以下のような拓本群に注目し、調査研究を進めている。

・松本源吉拓本群(宮城県立図書館所蔵)

・勝倉元吉郎拓本群(個人所蔵、一部東北学院大学管理)

・宮城県石巻市調査拓本群(同市所蔵)

・坂田二三夫拓本群(元興寺文化財研究所所蔵)

・川勝政太郎拓本群(大和文華館所蔵)

・大分県立歴史博物館所蔵拓本群(同博物館所蔵)

 

3 フィールドワーク

@ このプロジェクトにおける2つのフィールドワーク

このプロジェクトでは、2つの面からフィールドワークを捉えている。一つめは、いわゆるフィールドワークで、実際に金石文の所在する現地に赴き、拓本によって調査・記録・蓄積・研究を進める。二つめは、それぞれのフィールドにおいてすでに蓄積されてきた調査・記録データを掘り起こし、活用の方法をさぐることである。

 具体的には、プロジェクトグループを大きく東日本班と西日本班に分けて、それぞれにフィールドを設定している。

 

A 東日本班

 東日本においては、宮城県仙台市・青森県弘前市などでフィールドワークを進め、現在は宮城県石巻市および周辺地域(Kahoku area)にフィールドを設定している。これらの地域は、中世に造立された「板碑」(J:itabi)という石造供養塔が多く残され、全国でも有数の板碑集中地点として知られている[image3][image4][image5]。そのために20世紀前半から継続して多くの調査が実施され、その成果が記録・蓄積されてきた。

 とくに1990年代前半に編纂された自治体史である『石巻の歴史』においては、当時としてはもっとも進んだ板碑調査が実施され、その後『仙台市史』板碑編などにも継承されてゆく。その調査の過程で、拓本や写真など多くの調査成果が記録・蓄積されていた。

 ところが、2011年の東日本大震災で、この地域の板碑や自治体が管理していた調査資料も被災した。しかし、その後のレスキュー活動において調査資料のかなりの部分は保全されていることが、このプロジェクトの調査により判明している。

 このプロジェクトでは、1990年代の調査を再び検証しながら、板碑現物および過去の調査記録の両面に調査の手を広げている。あわせて、被災により取り壊された石巻文化センターに代わるあらたな複合文化施設の建設に合わせて、石巻市とも協力しながら、後述のあらたなひかり拓本の技術などを応用しながら、地域の復興にも寄与できるよう活動している[上椙2019]

 七海雅人は、すでに長期にわたってこの地域の板碑調査に従事してきたが、とくに石巻地域の南側に隣接する松島町雄島の海底に沈んだ板碑について、科研費の獲得などによりユニークな調査研究を展開している(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-22520685/)。七海はその成果を東北学院大学博物館で公開し(https://www.tohoku-gakuin.ac.jp/facilities/museum/research04.html)、さらに地域にも教育普及活動を行っている[七海広報2019]

 このほか、過去には宮城県仙台市地域・青森県弘前市地域をフィールドとして金石文拓本を採集した。

 

B 西日本班

a-西日本においては、和歌山県高野町の高野山にフィールドを設定している。高野山(金剛峯寺)はユネスコ世界遺産にも指定され、観光地としても有名であるが、9世紀に開かれて以来の多くの史料に恵まれ、歴史的・宗教的にもっともじゅうような霊場の一つである。

 このプロジェクトでは、とくに高野山の「町石塔婆」(J: chōishi-tōba)を調査対象としている。町石は巡礼者のため、1町ごとに建設されたmile stoneで、塔婆の形に成形され、その四面には町数や紀年銘などの銘文が彫られている。最初に建設されたのは13世紀であり、その後破損のたびに部分ごとに修復・補充が行われ、近代まで造立が続いた。

 町石からは、宗教のみならず中世の政治や交通・流通などさまざまな研究発展の可能性があるが、数量の多さ、都会から離れた高野山という場所のアクセスの難しさ、前近代の参詣道の多くの部分が放棄されてきたことなどから意外なほど学術調査が遅れている。

 今回は佐藤亜聖が中心となり、主として考古学的アプローチから実測図の作成を担当する佐藤のプロジェクトと、拓本により調査を進めるこのプロジェクトが合同で、高野山金剛峰寺や地元自治体(高野町)の協力を得ながらフィールドワークを実行している。

 

b-もう一つのフィールドとして、このプロジェクトでは大分県を対象としている。大分県は全国的にみても、有数の金石文集中ポイントである。この地域には、近世から多くの文人や思想家を輩出するなどの伝統があり[1]、江戸時代から金石文調査への関心が高い。近代以降も何度も広範な調査が実施され、最近では大分県立埋蔵文化財センター(https://www.pref.oita.jp/site/maizobunka/)による調査が実施された。菊地大樹はこの調査にも参加している[菊地ppt.151219]

 大分県立先哲史料館では、このような近代の大分地域における金石文調査の歴史を研究課題の一つとして展示などを行い、菊地も協力している[菊地ppt.171122][菊地2020]。その結果、とくに20世紀前半期の調査は史料編纂所拓本群とも密接な関係があることが分かってきた[櫻井2020]。近年関係する良質な史料群にも注目しており、このプロジェクトとも協力して調査・記録・整理などを進める予定である。

 このほか過去には、徳島県吉野川流域地域をフィールドとして、金石文拓本採集を行った[image6][image7]

 

4 あらたな金石文拓本の記録・蓄積・公開方法の開発

@ 金石文拓本史料データベース

 2001年以来、史料編纂所所蔵拓本群のデータを「金石文拓本史料データベース」によって史料編纂所から公開している(https://wwwap.hi.u-tokyo.ac.jp/ships/shipscontroller)。その後、金石文の分布状況をマッピングして示す歴史地理情報を付与するなどいくつかの改良を施してきた。

 しかし、この20年ほどのIT技術の著しい進歩により、デジタルデータ作成の方法や蓄積できる容量、公開システムなども大幅に進化していることを踏まえ、このプロジェクトでは構造にかかわる大規模なリニューアルを計画している。

 他にはみられない史料編纂所データベースシステムの特徴として、古文書や古記録など様々なデータベースを横断検索できる機能が挙げられる。この機能により他の史料との関係、たとえば同時期・同時代に関連するどのような史料が存在するのか、ある金石文に現れる人物は別の史料ではどのような活動をしてたことが知られるのか、金石文中の歴史的名辞は、文献史料ではさらにどのような一般的な文脈(context)の中に位置づけられるのか、といった研究がさらに進展することを期待している。

 

A コンテンツの作成

 「金石文拓本史料データベース」のコンテンツとしての、金石文拓本のデジタル画像作成技術の開発は、このプロジェクトを成功させるうえで極めて重要な意味を持っており、これ自体があらたな歴史情報研究の課題となっている。

 金石文拓本のもつ特徴の一つとして、様式により一定の法量の範囲に収まる文献史料に対して、対象となる石造物などの大きさにより、拓本も一辺が数cmから10mにおよぶものまで、さまざまな法量を占めることを挙げなければならない[2]。とくに大型の拓本の撮影は、従来の文献史料に対応してきた一般的な方法では不可能な場合が多い[3]

2019年には株式会社堀内カラー(https://www.horiuchi-color.co.jp/service/archive/index.html)の協力を得て、大型スキャナーの設置や分割撮影画像の接合などの方法を開発し、約620タイトルの大型拓本のデジタル化に成功している[image8[image9][image10]

 

B ひかり拓本技術開発

 伝統的な拓本技術にはある程度の熟練が必要で、天候にも左右されやすく作成時間も必要である。また、画像解析のためにはデジタル化という工程を踏まなければならない。

このような従来の拓本の短所を踏まえつつ、同時に拓本の長所も十分に意識したうえで、技術の上でも時間の上でも大幅に省力化を実現した光拓本技術の開発をこのプロジェクトでは取り込み、従来の拓本との比較検討により、さらに精確な金石文史料の読解に役立てようとしている[image11]

本技術開発は、上椙英之が中心に行い、現在特許申請中である。詳細については、別途上椙よりレポートする予定である。

 

5 国際的展開と歴史叙述

@ 「日本宗教史研究のための新しい史料論」ワークショップ

20143月、アメリカ合衆国NJ州プリンストン大学で、を、[科研費2011-15]とプリンストン大学宗教学部の共催により開催した[菊地ppt.140315]。その成果を取り入れて、論文を発表した[菊地2015]

A “New Views on the Circulated Pattern of Itabi in Early Medieval Japan”

 Concentricity or Network? : the Connective Principle of Politics, Institutions and Religions in Medieval and Early Modern Japan, Panel, Association for Asian Studies annual meeting 2020 in Bostonが採用された(Covid-19感染拡大により大会中止)[Kikuchi paper2020]

 

 

6 プロジェクトに関するその他の情報

@ プロジェクトのHPURL

 現時点では存在しないが、近日中(雑誌の編集過程の最終段階まで)には作成公開の予定である。

 

A プロジェクトメンバーの略歴と個人のHPURL

Hiroki Kikuchi 菊地大樹 https://researchmap.jp/read0184866

Associate Professor of Hitoriographical Institute, University of Tokyo. He is interested in medieval Japanese history and history of religion. In addition to his research for medieval folk religion centering on jikyōsha (the Lotus Sutra practitioner) and Buddhist temples, he has been working on itabi and inscriptions in medieval Japan.

 

Masato Nanami 七海雅人 https://researchmap.jp/mim-nana

Professor of Faculty of Letters, Tohoku Gakuin University. He is interested in Kamakura Shogunate and its relationship with gokenin (warrior retainers). Since he was a graduate student, he has been paying great attention to the regional history and the development of itabi in the Tohoku Area.

 

Asei Sato 佐藤亜聖 https://researchmap.jp/yamatokouko

Senior Researcher of Gangōji Institute for Cultural Property. He is interested in medieval Japanese archaeology. He has been working on cities, temples and cemeteries. In his latest works, he has distinguished the prototype and classified the developing pattern of stone stupas and memorial objects.

 

Toshiko takahashi 高橋敏子 https://researchmap.jp/read0170912

Professor of Historiographical Institute, University of Tokyo. She has been working on the medieval village society and the manorial system with the discipline of historical geography by the elaborated research for the Documents of Tōji. Her interests has been developing of institutional system of medieval temples.

 

Satoshi Inoue 井上 聡 https://researchmap.jp/akcrchykchkksk

Associate Professor of Historiographical Institute, University of Tokyo. He is interested in medieval shrine system and its control over the manorial system. One of his main fields are located in manors under the control of Usa Shrine. He has also engaged in the database system based on historical information studies.

 

Wataru Enomoto 榎本 渉 https://researchmap.jp/read0165388

Associate Professor of International Research Center for Japanese Studies. His first monograph argues the medieval exchange between China and Japan in the East China Sea by tracing merchants’ and monks’ activities. His textual interests has been extended to biographies of medieval Japanese monks inscribed on epigraphs in China.

 

Hideyuki Uesugi 上椙英之 https://researchmap.jp/uhmy

Associate Fellow of Nara National Research Institute for Cultural Properties. He started his career from Japanese folklore by centering on the opening ceremony of the bridge. He has been paying attention to the inscriptions which had been recorded on stone steles. He has been developing image proceeding scheme for archiving inscriptions.

 

B プロジェクト資金と概要

(1) 東京大学史料編纂所附属画像史料解析センタープロジェクト「金石文拓本史料の整理と公開」 1998〜現在

 ・画像史料解析センターURL https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/gazo/gazo.html

 ・プロジェクト活動報告 

https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/publication/gazo/CSVS_10report.pdf pp.81-84

   https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/publication/gazo/CSVS_20report.pdf pp.53-54

(2) 学術振興会科学研究費プロジェクト

 ・「日本金石文の編年史料化と史料学的分析方法に関する研究」 20052007

https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-17520421/

 ・「拓本調査を基盤とする日本金石文の情報資源化と歴史叙述への応用的研究」 2001-2015

  https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-23320134/

 ・「デジタル技術による金石文史料の研究資源化と学融合的歴史叙述への応用研究」 2019-2024

  https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H00536/

 

(3) 東京大学史料編纂所共同利用・共同研究拠点、一般共同研究課題「画像解析技術に基づく石造遺物研究資源化に向けた調査研究」 2018-2019

https://www.hi.u-tokyo.ac.jp/collaboration/kyoten/h30/seika.2018.html#19

 

C プロジェクトに関連する論文・スライド・写真など

(論文)

・上椙英之「ひかり拓本による石造物画像の資源化」『東京大学史料編纂所附属画像史料解析センター通信』Vol.86, 2019

・菊地大樹「主尊の変容と板碑の身体―「紅玻梨色阿弥陀」板碑をめぐって―」、藤澤典彦編『石造物の研究』高志書院、2010

・菊地大樹「日本中世における宗教的救済言説の生成と流布」『歴史学研究』Vol.9322015

・菊地大樹「中世における五輪塔造立の展開―大分県の事例を中心に―」、大分県教育庁埋蔵文化財センター編『大分の中世石造遺物』5・総括編(大分県教育庁埋蔵文化財センター調査報告書97)、大分県教育庁埋蔵文化財センター、2017

・菊地大樹「近代の史料調査と大分の金石文」『史料館研究紀要』(大分県立先哲史料館)Vol.242020

・櫻井成昭「日名子太郎関係資料について」『史料館研究紀要』(大分県立先哲史料館)Vol.242020

paper

Hiroki Kikuchi, “New Views on the Circulated Pattern of Itabi in Early Medieval Japan”, concentricity or Network? : the Connective Principle of Politics, Institutions and Religions in Medieval and Early Modern Japan, Panel, Association for Asian Studies annual meeting 2020 in Boston

PPT

・菊地大樹ppt.140315「悉曇・偈頌から見た中世金石文の教理的背景」

・菊地大樹ppt.151219「中世における五輪塔造立の展開」

・菊地大樹ppt.171122「近代の史料調査と大分の金石文」

(広報)

・(七海雅人提供)「石碑の拓本に挑戦!」2019

image

image1 2018911日撮影 宮城県石巻市東馬場個人宅板碑群

  立ったままの状態の板碑に画仙紙を水で圧着し、その上から油性の墨を載せてゆく工程

image2 201167日撮影 徳島県徳島市国府町個人宅板碑

  墨を載せる工程がほぼ終了した状態。

image3 20131018日撮影 青森県弘前市中別所板碑群

  13世紀後半から14世紀にかけて、在地の有力者によって建立された。後方に写っているのは、地域を象徴する岩木山。

image4 2014615日撮影 青森県藤崎町唐糸御前公園板碑

  拓本に墨を載せる工程がすべて終わった状態。

image5 青森県深浦町北金ケ沢板碑群

  群全体の悉皆調査を行い、すべての板碑に紙を張り、墨を載せる工程がすべて終わった状態。

image6 2011114日 徳島県板野町辻見堂板碑群

  現地の板碑群について調査方法を検討しながら、写真撮影などを実施。

image7 2016429日 徳島県神山町坂丸地蔵堂板碑群

  同上。

image8 20191220日 東京都港区 株式会社 堀内カラーのラボ

  貴重書として保管されてきた金石文拓本を、はじめて研究所外に持ち出して撮影する

末などにより調整・撮影している様子。

image9 大分県国東市伊美別宮社国東塔銘(正応3121日)拓本(史料編纂所所蔵)

  大型のため、ワンカットでは撮影できない。複数カットで撮影したrawデータをtiffに変換したうえ、さらにPC上で接合してjpeg形式の1データとしている。

image10 奈良県奈良市地獄谷石仏群拓本(circa. 8C

  同上。

image11 2018911日 宮城県石巻市東馬場個人宅

  ひかり拓本作成の様子。デジタルカメラ・三脚・タブレットという簡易なセットで、1人でも撮影可能。様々な角度から複数回撮影し、現場ですぐに画面を再構成して提示できる。傘をさして日光の干渉を防ぎ、ストロボによる陰影が出やすいように工夫している。

 

 



[1] その活動を顕彰するために、大分県立先哲史料館(https://www.pref.oita.jp/site/sentetsusiryokan/)が設立されている。その学芸員の一人である櫻井成昭は、このプロジェクトの研究協力者(associate member)の一人である。櫻井の以前の所属は大分県立歴史博物館(https://www.pref.oita.jp/site/rekishihakubutsukan/)であり、このときには所蔵拓本の調査に協力するとともに、荘園村落遺跡調査の一環としての石造物調査にも積極的に関与した。

[2] もちろん、拓本の材料となる画仙紙(J:gasenshi)は6尺(約1.8m)などの規格があるが、小型の対象は紙を裁断して、大型の場合は紙を貼り継いで拓本を作成することになる。完成した拓本も、対象の形状によって長方形になるとは限らない。

[3] 従来は、マイクロカメラで分割撮影したフィルムをスキャニングし、デジタル化していた。接合はせず、データベース上では別に遠距離から全体を撮影した解像度の低い画像に部分画像をマッピングすることにより、拡大縮小するという複雑で非効率なシステムにとどまっていた。