3−1)生漉き和紙の復元
下記のA〜Cについて生漉き和紙の復元を行った。
A紙漉きの前に紙料を洗浄しない紙(柔細胞・非繊維物質を含む)
B紙漉きの前に紙料を洗浄した紙(柔細胞・非繊維物質を含まない)
Cチリ取りの際に出た原料を紙打ちして漉いた紙
なお、素材となる楮の水漬け・表皮削り・再度の水漬けは事前に行った。
◆煮熟(2時間30分ほど.煮え具合を1時間ごとに確認)
・煮熟は美濃和紙の里会館研修施設にて行った。
・地元産の美濃楮1.7kgを1.2kgに選別して使用した。
・通常の楮は一年草であるが、美濃産は生産量が低いため、多年草のものが混じることがある。そのため楮の硬さに差があり、煮え方にムラが出てしまい、筋のような繊維が残ってしまった。
・木灰は綺麗な上澄みがとれず、ココアのような色合いのもので煮熟。楮の色も茶色になった。
◆煮晒し
・煮熟した楮を水槽内に広がるようにつけ、木灰を取り除いた(2〜3時間)。
◆チリ取り
・4時間。
・黒いゴミのようなものと、表皮削りで取り除くことができなかった甘皮を取り除いた。
・煮熟時間が長かったためか、楮が崩れやすかった。
・チリ取りを終えた後、「ツボ」という球体状のまとまりをつくる。
◆紙打ち(叩解)
・今回は6回叩いた。ある程度乾くと塊が伸びないため、5回目に水をつけて叩く。
・両手に叩き槌をもち、力を入れずにその重みを利用してリズミカルに叩く。
・一通り叩いたらパン生地のように折りたたみ、90度向きを変えて叩き始める。
・叩解数は煮熟時間によって変わり、叩き方よりも煮え方のほうが重要。通常は4回程度で最後の回に水をつける。
◆紙出し(繊維の洗浄)
・紙打ちした繊維を半分に分け、その半分については繊維を解すように水で洗浄した。
・洗浄したほうの繊維は白くなった。
・ここで洗浄しなかったもの(A)、洗浄したもの(B)、チリ入りのもの(C)に分けた。
・夏場は紙の腐敗が早いので、冷蔵庫で保存した。
◆紙漉き
・簀目25本……縦揺すりのみ。(A・B・C)
簀目20本……横揺すりをいれる。(A・B)
簀目9本……強杉原風。(A)
簀目20・25本…溜め漉き風。(A・B)
・薬品付けトロロアオイを使用した。
・横揺すりを入れる場合は、化粧水と捨水だけが縦方向で、それ以外は横揺すりになる。
・繊維を汲みこむ量は通常4〜5回であるが、ネリ具合によって変わる。ネリが多い場合は漉き舟に均一に分散しているため多く汲み込み、逆に少ない場合は汲み込み回数は減る。今回はネリを一定にして、漉き始めを薄くして徐々に厚くする方法をとったため、汲み込み回数は一定ではない。
・また8月10日(火)に紗漉きによる紙漉きを行った。紗下簀25本。(B)
◆脱水
・3時間程度。漉き返し和紙(後述)とあわせて行った。
・漉いた和紙を一晩おいた後、ジャッキを使用して水分を抜いた(本来は一日かけて水分を抜く)。
・夏場は紙の異臭や変色してしまう。
◆乾燥
・板干し(トチ材)。強杉原は敷き干し。
・今回は天候が悪かった為、板に貼った後扇風機で乾かした。
・簀面を板側にして貼り付けた。