中世荘園絵図の良質な図版提供を目的とした『日本荘園絵図聚影』も、今回で五回目の配本を迎え、二月末日、東京大学出版会より刊行された。荘園絵図研究グループによる同聚影の製作は、今回より画像史料解析センターの一プロジェクトとなり、センタースタッフが編集を担当、鋭意準備を進めてきた。本冊は、山城・大和を除く近畿地方の絵図、計41点をA3プレート138丁に収録する。各所蔵者のご理解・ご協力により、一部を除いて、絵図原本を8×10インチないしは4×5インチのフィルムにて撮影させていただいたものを収録した。掲載図版はモノクロコロタイプ印刷をベースとし、著色のある絵図についてはカラーオフセット図版も付してある。また大型絵図の主要なものについては、分割図や部分図を多用することで、詳細な分析を可能にしている。
今回の収録絵図のうち、とりわけ注目されるのは、播磨国鵤荘絵図2点である。詳細な条里記載をもつこの絵図は、中世荘園のみならず古代荘園の研究にも供されるものであり、史料的意義の大きさは言うまでもない。この二枚の絵図については、モノクロ・カラーの全図に加えて、カラー4分割ならびにモノクロ9分割を付することで、非常に精密な分析が可能となった。今後、緻密な絵図分析の進展に対応して、こうした方法を適宜選択してゆくことが重要と思われる。また隣接する弘山荘条坊写図・小宅荘三職方条坊坪付図や、揖保川用水絵図についても、分割図・カラー図を伴って収録したことで、該当地域の荘園研究に大きく寄与するものとなろう。
主要絵図として、他に丹波国大山荘関係図(3点)、摂津国島上郡水無瀬荘絵図、摂津国垂水荘関係図(2点)、摂津国川辺郡猪名所地図、和泉国日根野村関係絵図(2点)、紀伊国かせ田荘関係絵図(3点)、紀伊国井上本荘絵図、紀伊国神野真国荘絵図などを収録している。研究史のあつい著名な荘園絵図が集中しており、利用価値は非常に高いものになると考える。従来あまり知られずにあった写図や、研究状況の進捗にあわせて近世絵図も加えるなど、研究上の便宜を念頭において編集を行った。なお、荘園絵図ではないが、関連する境内絵図類として、伊勢国稲生三社絵図、丹波国安国寺境内図、摂津国長洲御厨内大覚寺絵図なども収めている。
本冊の刊行によって、主要有名荘園の集中する近畿編は完結を迎え、あとは西日本編を残すのみとなった。これまでの編集方針を踏襲しつつ、新な視点をもって編集にのぞんでゆきたい。次回刊行の予定は平成13年度末である。