東京大学史料編纂所

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研究種目名 基盤研究(B)
研究課題名 古記録の史料学的な研究にもとづく室町文化の基層の解明(20320100)
研究期間 2008年度~2011年度
研究代表者 榎原 雅治
研究目的 室町時代は、いわゆる「日本的な」文化様式や美意識の成立した時代だとされる。その文化は、公家・武家・僧侶・町衆など異なる階層それぞれで育まれてきた文化要素の接触と混淆から生じたと考えられる。したがって、当該期における諸階層の文化的な営為や、階層をこえた人的交流の実態を明らかにすることは、日本の伝統文化成立の基層を解明するうえで必須だといえる。
ところが、文化史研究の現状は、東山文化の推進者とされる足利義政や、著名な連歌師・茶人・絵師など、文化史上における頂点的な人物に焦点をあてた研究が大半であり、室町文化の広大な裾野を形成した、文化史的には無名な人々の文化的な営為や、人的交流の具体相についての研究は進んでいない。その理由の大なるものとして、当該期の研究のための史料的な環境が十分に整備されていないことが挙げられる。具体的には、以下のような問題である。
・室町時代の古文書は分量が厖大であり、『平安遺文』『鎌倉遺文』のような集成が行われておらず、当該期の文書を通観する術がない。
・室町時代の文化を研究するために重要な史料でありながら、全容の明らかでない古記録が存在している(儒家清原氏歴代の日記など)。
・その存在は既知であるが、自筆原本の接続の混乱、諸写本の比較検討の困 難さ、などの理由から公刊に至っておらず、拠るべき底本が不明確な古記録が多数存在する(「中院一品記」「和長卿記」など)。
・平安・鎌倉時代については、主要な古記録の相当部分のフルテキスト・データベース(以下、全文DB)が作成されているのに対し、室町時代の古記録の全文DB化は寥々たる状況にある。
・平安・鎌倉時代と比べて、人名索引などのツール類の整備も進捗していない。
このような史料的な環境の制約により、当該期の人物の文化的な営為や人物間交流に関する史的研究は、先行する鎌倉時代と比較しても大きく立ち遅れている。そこで本研究は、史料的な環境を整備することで、具体相の集積を多角的・効率的に果たし、伝統文化そのもののありようの多様さを解明しようするものである。
研究実績の概要
  • 2011年度
  • 2010年度
  • 2009年度
  • 2008年度
【2011年度】
室町時代の古記録を研究資源として活用するために、以下のような研究を行った。
①国立歴史民俗博物館、国立公文書館、宮内庁書陵部、下郷共済会所蔵「兼宣公記」、および国立歴史民俗博物館所蔵「広橋家旧蔵記録文書典籍類」に含まれる「兼宣公記」別記について、前年度までに作成した全文翻刻をもとに登場人物の同定、記事内容の研究を行い、応永三〇年・三一年分を『史料纂集 兼宣公記第二』として二〇一二年度に刊行するために原稿を完成させた。
②尊経閣文庫、史料編纂所所蔵「碧山日録」の校合を行うとともに、登場する人物の同定、記事内容の研究を進め、『大日本古記録 碧山日録一』として二〇一二年度に刊行するために原稿を完成させた。
③国立歴史民俗博物館所蔵「綱光公記」寛正三年記の解読と研究を進め、『東京大学史料編纂所研究紀要』に掲載・公開した。
④宮内庁書陵部所蔵「宗賢卿記」一~三の解読、登場人物についての研究を進め、研究成果報告書に全文翻刻を掲載した。また人名索引を作成し、併せて掲載した。
⑤国立歴史民俗博物館所蔵「中原師胤日記」の原本による校正を行い、全文翻刻を『国立歴史民俗博物館研究報告』に掲載するために原稿を作成した。
備考