東京大学史料編纂所

HOME > 編纂・研究・公開 > 共同研究 > 「信長記」諸本の史料学的研究

研究種目名 基盤研究(C)
研究課題名 「信長記」諸本の史料学的研究 (19520557)
研究期間 2007年度~2009年度
研究代表者 金子拓
研究目的 本研究の目的は、織田信長の家臣太田牛一が著述した『信長記』(別称『信長公記』『原本信長記』『安土記』など)諸伝本の史料学的検討である。国内各所に伝来している『信長記』諸伝本を調査し、写真による撮影・紙焼写真購入を進めるいっぽう、内容を検討し書写伝来の系統を明らかにするほか、相互にテキストを比較することで、この時期の政治史を新たな角度から考察するための基礎づくりを行いたい。
また、『信長記』の作成・書写伝来の過程を明らかにすることで、テキストのなかに、信長の時代から豊臣秀吉の時代、江戸時代に至る過程の歴史認識がいかに反映されているのかを考察する。
撮影・購入により蒐集した紙焼写真を史料編纂所図書室を介して広く全国の研究者の閲覧に供するとともに、『信長記』およびこれと深く関連する編纂文書集『増訂織田信長文書の研究』(奥野高広氏編)のフルテキスト・データベース化のための土台作りを行いたいと考えている。
研究実績の概要

  • 2009年度
  • 2008年度
  • 2007年度
最終年度の本年度は、これまでの自筆本・写本調査の成果にもとづき、岡山大学附属図書館池田家文庫所蔵の太田牛一自筆本『信長記』の原本調査を行った。元文化庁文化財調査官藤本孝一氏・本所史料保存技術室高島晶彦氏にもご同行いただき、テキスト内容にとどまらず、造本(装訂・料紙・筆跡)や作者による擦り消し訂正など、原本調査によってしか確認できない情報の蓄積につとめた。
またいっぽうで、一昨年度・昨年度に調査できなかった史料所蔵機関におもむき、『信長記』未調査写本の調査・焼付写真購入と写本一覧表の充実につとめた。調査をおこなったのは、前田育徳会尊経閣文庫・徳川林政史研究所・九州大学附属図書館付設記録資料館などである。
これらの成果をまとめ、代表者金子の私見をまじえて、単著『織田信長という歴史』(勉誠出版)として刊行した。また連携研究者堀の単著『日本中世の歴史7天下統一から鎖国へ』(吉川弘文館)にも反映されている。
これと並行して、太田牛一の別の著作の自筆本・写本の研究にも着手している。この関連では、名古屋市蓬左文庫所蔵の自筆本『太田和泉守記』の原本調査を行い、その成果を中央大学人文科学研究所公開研究会にて口頭報告した。
右に掲げた著書および調査は関係地域の注目するところとなり、『信長記』写本尊経閣文庫本独自の記事については『岐阜新聞』二〇〇九年一二月二八日付朝刊に、『太田和泉守記』の岐阜城攻め記事については同紙二〇一〇年一月七日付朝刊にてそれぞれ紹介された。
また、九州大学附属図書館付設記録資料館所蔵の宇土細川家文書中にある『信長記』写本を調査したさい、一緒に同文書所収『阿部氏家蔵豊太閤朱印写』の調査を行ったところ、同史料中にこれまで未紹介の加藤清正宛豊臣秀吉・秀次朱印状の写しが多く収められていることが判明した(約五〇点)。これらについては、同史料全体の史料紹介とあわせ加藤家旧蔵文書の伝来・散逸をめぐる研究を公表する予定である。
備考