東京大学史料編纂所

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研究種目名 中核的研究拠点(COE)形成基礎研究費→特別推進研究(COE)
研究課題名 前近代日本史料の構造と情報資源化の研究(12CE2001)
研究期間 2000年度~2004年度
研究代表者 石上英一
ホームページ http://www.hi.u-tokyo.ac.jp/personal/yokoyama/jpmem/index.htm
研究目的 平成一二年度COE形成基礎研究費(文部省中核的研究拠点形成プログラム)に歴史情報研究のグループが応募し、二〇〇〇年度-二〇〇四年度の五か年計画として「前近代日本史料の構造と情報資源化の研究」(研究拠点:東京大学・「前近代日本の史料遺産プロジェクト」)が採択された。本研究は、史料編纂所における歴史情報研究を基礎に、「日本の古代から明治維新までの史料を情報化された歴史遺産とする」研究を主題とし、The Japan Memory Project(JMP)と称している。研究組織には、史料編纂所教官のほか、東京大学情報基盤センター中川裕志教授、東京大学大学院工学系研究科堀浩一教授に分担研究者として参加していただいている。
①研究の目的
1 日本列島上に発展した社会の歴史を知ることは、二一世紀の日本を考え、国際理解を得るために重要である。また日本には、八世紀の正倉院文書をはじめとして、古文書などの史料が、世界の諸地域に比較しても豊かに残されている。これらの史料の構造を研究し、情報化社会の中で歴史遺産として活用できるようにすること、これが研究の目的である。2 日本では、古代以来、史書編纂や史料保存が行われてきた。近世には、『大日本史』の編纂など、修史事業が各藩や幕府などで行われ史料保存も進んだ。明治維新(一八六八年)により近代国家が成立するや、新政府により、一八六九年に古代から明治維新までの時期を対象とした新たな歴史編纂事業が開始された。これが、研究拠点が置かれる東京大学史料編纂所の母体である。全国史料調査は一八八五年から本格化し、一九〇一年には『大日本史料』など前近代日本史基幹史料集の刊行が始まり現在に至っている。一方、世界を見ると、アメリカのカリフォルニア遺産 California Heritage Collectionなど、歴史資料の情報化とネットワークでの公開が推進されている。日本でも、学術審議会学術情報部会報告「学術情報データベースの整備について」(一九九七年)で、「日本文化に関わる学術資料情報の電子化とアーカイブ、並びに高次利用のための方策」、「国文・国史学等の人文科学の古典籍の電子化とアーカイブの推進、並びに世界に向けての公開」の必要が強調されている。本プロジェクトはこのような方向にもかなうものである。
3 歴史研究は、(1)史料の所在調査・複製による大量集積、(2)各史料群の生成・保存の場と原秩序の復元、(3)史料の読解、(4) 史料の諸要素への分解(分節化)、(5) それら諸史料要素の事件史・個人情報などの歴史の脈絡にそった再結合、(6) それを基礎とした歴史の文脈の理解、という精密な方法により行われている。本プロジェクトでは、このような歴史研究の方法を、コンピュータを利用して、さらに厳密でスピードのある、現代社会の要請に応じられるものにしたい。すなわち、前近代日本(古代から明治維新)の膨大な史料を、事件、個人、物体としての史料などの要素に分解し、それらを事件史、個人史、史料群に再構成し、それにより歴史的文脈の理解を容易に行うことができるデータベースを創出する方法を研究する。これにより、事件史・個人史、史料群の原秩序の復元などの研究は新しい段階に至ることが可能となる。
4 本プロジェクトでは、上記の研究の上に、次のようにネットワーク型データベースを作り、情報資源化された「前近代日本の史料遺産」が、歴史学のみでなく、文学・宗教学・自然史・博物学、あるいは日本学などの諸学問分野共有の研究資源となると考えている。
A 電子情報化された史料遺産は、大量の史料の画像情報、全文情報、索引情報などを複合したデータベース(Japan Memory Database)となる。これにより、任意の事件・個人・史料群についての歴史情報を入手できる、ネットワーク上の仮想史料研究室(Virtual Laboratory for Histrical Resources)を実現する。
B このデータベースは、史料所蔵機関、諸研究機関・研究者との共同により支えられねばならない。本プロジェクトでは、そのための、情報システムのあり方についての研究も行なう。
C このデータベースは、外国からも容易に検索できるものでなければならない。そのために、外国人特別研究員(COE)や外国人研究者との共同研究、国際研究集会などを通じて日本前近代の歴史用語や綱文(何年何月何日になにがあったかを簡潔に示す文)、さらには史料解題の英語などの外国語への翻訳の研究も行う。これにより、膨大な日本の史料遺産が国際的な日本理解の基礎となることを望んでいる。
研究実績の概要

  • 2004年度
  • 2003年度
  • 2002年度
  • 2001年度
  • 2000年度
【2004年度】
1 総括
 本研究により、史料編纂所に前近代日本史料歴史情報研究拠点を設けるために、情報資源蓄積方法・歴史情報発信方法を研究して統合型データベースシステムを実現し、また外国所在前近代日本関係史料調査や歴史語彙情報化研究により国際的な日本学における前近代日本研究との連携の基盤を構築することができた。
2 研究集会
①二〇〇四年七月第五回国際研究集会「日本学研究における資料の諸相とその利用」を開催した。研究報告は、科学研究費研究成果報告書『前近代日本史料の構造と情報資源化の研究』(二〇〇五年三月)に掲載した。
②二〇〇四年一二月第六回国際研究集会「東アジア史料研究編纂機関国際学術会議」を開催した。研究報告は、『アジア史料の情報資源化と国際的利用』(二〇〇四年一二月)に収載した。
③二〇〇五年二月第五回公開研究会「前近代日本の史料遺産プロジェクト成果と課題」を総括集会として開催した。
3 システム開発と史料デジタル化データベース構築
①前近代日本の史料遺産プロジェクト統合データベース開発 前近代日本の史料遺産プロジェクトで開発した各種データベースと史料編纂所の既存各種DB、計三〇を統合し、前近代日本の史料遺産統合データベース(Japan Memory Project Integrated Database System:JMPIDB)を開発し、OracleTextサーバの機能強化を行い公開体制を構築した(二〇〇五年度に試験公開予定)。史料群・歴史情報の多様性に対応して、構造化語彙DB、原本調査DB等を開発し、電子くずし字字典の機能追加を行った。
②古典籍史料機関間横断型検索システム開発 国文学研究資料館を中心とする古典籍史料横断検索システムに参加し、二〇〇三年度に続き、古文書目録DB・古文書全文DB・編年綱文DBのZ39.50/DublinCore版サブセットを開発した。
③出版物デジタル化研究 史料編纂所刊行の日本前近代史基幹史料集を効率的に全文DBに入力するため、TEX組版の開発を『大日本維新史料』井伊家史料・『大日本史料』第六編について行い、TEXデータの全文DB用XMLデータへの変換システムを開発した。
④史料デジタルデータ作成 前年度に続き前近代史研究の中核となる近世・明治期写本(記録・文書関係)と維新史料編纂会引継本について約二〇万コマを撮影しデジタルデータを作成した。これにより画像ファイル数は五三〇万に到達した。
4 史料情報研究とデータ蓄積
①約三〇の小研究計画を進め、多様な史料情報の集積、史料情報研究、史料蒐集を行った。中世・近世編年史料、中世・近世人物情報、中世文書所在追跡調査、花押彙纂などについて統合データベースの前提となる分散・小規模データベースを作成した。
②立花家文書など大規模史料群の構造分析のための基礎調査、デジタル化対応史料調査方法開発のための検討を行った。
③『大日本古文書』『大日本古記録』、国史大系(平安時代法制史料)などの全文データ蓄積を進めた。『鎌倉遺文』、『大日本古文書』編年文書(奈良時代文書)のデータ校正を行った。
5 国際的日本学研究との連携
①日本史グロッサリー 日本史グロッサリーDB作成を継続して行い、同DBを辞書とした応答型翻訳支援システムの実験公開を行った。第五回国際研究集会にあわせて欧米研究者を委員とするグロッサリー委員会を開催した。一〇月にプリンストン大・コロンビア大・イエール大・ハーヴァード大の日本学研究室で、グロッサリーDBのプレゼンテーションを実施した(Ron、榊原、若林)。
②欧文版古代史料解題辞典 JMPに協力する欧米日本学研究者の古代史料解題辞典(Dictionary of sources of Classical Japan:DSCJ)プロジェクト(仏・米・蘭・ベルギーの歴史・文学史・宗教史研究者が編集委員)と共同し、DSCJのオンライン公開システムを開発した(二〇〇五年九月よりOnlineDraft2004を公開)。
6 東アジアを中心とした日本史料の調査研究と国際協同
①史料調査 韓国(国史編纂委員会)、ロシア(歴史文書館・海軍文書館)、コレージユ・ド・フランス日本学高等研究所(Ofudaコレクション)、台湾(中央研究院)において、日本史料の調査を実施した。
②東アジア史料編纂機関の協同 1、第六回国際研究集会により、韓国の国史編纂委員会、中国の中国社会科学院近代史研究所等と、東アジア漢字史料の国際的利用環境の発展について意見交換を行った 2、韓国のソウル大学奎章閣、韓国学中央研究院蔵書閣と学術交流について協議した。
備考