[画 像]

P17
#53(原本5−16
 五三 渋谷定心置文案
      ○コノ文書ノ完文、別ニ第五六号ニ収メタリ、字句ニ若干ノ異
      同アリ、宜シク彼此参看スベシ、
重之沙汰御公事可令支配、於得替所者、不可勤者也、
一鎌倉御神事之時、舎人出立事、一向ニ三郎かいとなミにてあるへし、
一鎌倉より人夫をめさるゝ時、うちもちり・ふかや・ふちこゝろやしき
はたけのほとをハからひてあつへし、人夫あまたあたらむ時ハ、女房
のふんにもさたすへし、三度ニ二とハうちもちりよりまいらすへし、
一大ゆかの番ハ、五ニ二をは三郎つとむへし、いま三をハ三人してつと
むへし、をちあひの殿原よりあふ事也、
一大庭御まきをひかん時ハ、ふかや・ふち心のさいけニしたかひて、一
 人ももらさす百文のせにをハからひてゝ、をちあひ・しもふかやの
二百文せにゝくして、三百文にて人夫のいとまをハうけとゝむる也、
そのむねを存へし、
一五所の宮御まつりの時、もしハ御すりのあらん時ハ、せんれいをたつ
ねて、ほとにしたかひて、そのやくをつとむへし、たいかんすへから
す、
一かまくらのやちハ三郎ニとらす、たゝし、ゐこんなからんおとゝ
ハすくせさすへし、他人をハやとせとも、おとゝにハかさぬ事おほく
みる所也、をやのめいをそむく事也、きひしくせいせハ、上ニ申すへ
し、
一下人らのあひたの事、かねて申つけ了、せけんのくそくせうせうあら
むをハ、こけさたに申あわせて、そのはからひにしたかふへし、
一女子にゆつるさいけ田畠ハ、件女子はうニすきたるふたうあらむ時
ハ、子息よりあひて、この事ハ一定かとよくよくたつねて、もし一定
ならハ、件のやしきを上まて申さすとも、をしとりて、子息等はいふ
んしてしるへし、件女子のこなとにとらする事あるへからす、
一をやのためにほうこうありて心さしあらむものを、おや死去のゝち、
いつしかとかをゐゝつけて、さんさんニあたる事、ゆめゆめあるまし
き事也、
一おやのために仏事するよしいゐて、そのようとうれうに、とかなから
ん人をせめてものをとりて、仏事する事あるへからす、くとくになら
ぬ事也、
一子息同まこらか中ニ、やしきなんとをはくやうにもうちいれて、しま
とう事あらハ、をのをのよりあひて、一とハひきたすけ、いまよりの
ちニハさる事候ましと、きしやうかゝせておくへし、なをその心あり
てくるう事あらハ、そのやしきをハ、おやの申たる事なれはとて、を
のをのわけてしるへし、
 右、この上にハさのミ申へきやうなし、この状をハ上下万人ひか事と
ハ候ましき也、一事といふともゆめゆめたかふへからす、あなかしこ
かしこ、
   建長二年庚戌十月廿日          御判