図書館総合展フォーラム第4会場 13:00〜14:30
「東京大学史料編纂所社会連携研究部門:図書館等所蔵史料の調査・整備研究」の目的

図書館等に所蔵されている歴史史料は、整理公開の体制が不十分なため閲覧が困難になりがちである。社会連携研究部門では、デジタル化によってそれらを知識資源として活用する方法を提案する。
フォーラムでは石川県立図書館との連携で進行中の『石川県史第二編』デジタル化プロジェクトの内容について紹介した。また、各地の図書館で行われている同趣旨の事業についても報告があった。

■報告1: 石川徹也氏(東京大学史料編纂所社会連携研究部門特任教授)「モデルとしての石川県史」


『石川県史第二編』デジタル化プロジェクトについての紹介。
単なる電子書籍化ではなく、自治体史が構造化されたレファレンスブック(単純に通読する本ではなく、それ自体が構造化された知の集積)であることに留意し、そうした特性を活かすデジタル化形態を提案。具体的には史料メタデータを介した史料の画像データや所在情報へのリンクを可能にするシステムの全体構造を提示した。



■報告2:宮崎謙治氏(石川県立図書館副館長)「当該事業の県立図書館側からの意義・評価」


『石川県史第二編』デジタル化プロジェクトについて図書館側の評価。
石川県では昭和3年(昭和14年に改訂版)以降県史が出版されていないため、現在も戦前の県史がレファレンスの定番である。とはいえ絶版で入手は難しく、デジタル化によりアクセスが可能になることは望ましい。
石川県では現在加能史料・県史資料を刊行しており、県史所載の膨大な史料へのアクセスも可能にしたい。ただし史料の所蔵先により公開の可否に差があり、現段階では限定的な公開となることはやむをえない。問題のある史料についてどのように制限をかけるかが今後の課題である。


■報告3:多々良友博氏(佐賀県立図書館 郷土資料調査担当係長)「佐賀県立図書館における郷土資料のデジタル化の取り組み」


先進的な活動で注目される佐賀県立図書館からの活動報告。歴史資料利用においても、最先端の活動を展開中。蓮池鍋島家文書など館蔵古文書30万丁をデジタル化し、ネット公開を目指す。
館には編纂室部門があり、これまでの蓄積もあったが、ふるさと雇用基金や図書館振興財団基金などの活用によって’09年から本格的に事業化にのりだした。こうした具体的な予算獲得方法も含む事業内容の紹介も行われた。多角的な活動を行うが、今後の課題として、大型予算の期限切れや嘱託職員によって蓄積されたデータと技術の継続があげられた。また、城下絵図の重ね図を用いたイベントなど企画中の活用方法も紹介された。
参照:佐賀県立図書館ブログ


■コメント:堀井 洋氏(北陸先端科学技術大学院大学 知識科学研究所助教)


金沢の情報学・歴史学・観光学研究者が参加する遍プロジェクトのコンセプトをふまえて、今後の歴史情報の資源化について展望。
歴史資料の先端的活用を目指した「歴史情報資源イエローページプロジェクト」を通じて、資料館・大学に点在する資料のプラットフォーム構築を目指している。歴史資源の活用を目指した場の形成・それらを統合する情報資源化プラットフォームの構築について提言を行い、自ら手がけるセマンティックウェブ技術を用いて歴史資料全体を群としてとらえる研究も紹介した。


■質疑


・郷土資料・写真・絵はがきの目録作りにおけるタイトル付けの難しさについて
・古文書公開の権利上の問題について
・プロジェクトの最終目標は?どういうものを最終的に提案するのか?
・史料メタデータの標準化についてどこまで視野にいれるのか?



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