東京大学史料編纂所

19 鹿王院・選佛寺所蔵史料の調査・撮影

 二〇一九年二月九・十日、京都市内の寺院二か寺で、ご所蔵史料の調査・撮影を行った。この調査・撮影は学習院大学史料館と共同で行った。
1 鹿王院所蔵史料の調査・撮影
 右京区嵯峨北堀町の鹿王院に赴き、典籍一点と、『鹿王院文書目録』(京都府教育委員会、一九九七年)で「近世文書」に分類されている史料につき、調査を行い、一部の撮影を行った。「近世文書」の撮影は四回目にあたる。ご高配をいただいたご住職吹田宏海氏に改めて厚く謝意を申し述べたい。
前掲目録の記載に従いつつ、今回の撮影略目録を掲げる。
○写本
玉隠和尚語録 一冊
○「近世文書」
E―四 一  元和元・一一・一二 畠地永代充行状 一通
E―四 二  元和二・一〇・一三 鹿王院領山請状 一通
E―四 三  元和二・一〇・一三 鹿王院領山請状 一通
E―四 四  元和二・一二・一三 田畠永代売券状 一通
E―四 五  寛永九・一二・一四 勝曼畠地充状 一通
E―四 六  寛永一四・三・二  鳥居本五郎左衛門屋敷預状 一通
J 二    辰八・二〇     七朝国師真判絵図自天龍借標 一通
J 三    永禄三・六     洪恩院領嵯峨仙翁寺山指図写 一鋪
J 四    永禄三・六     洪恩院領嵯峨仙翁寺山指図写 一鋪
J 六    永禄三・六     洪恩院領嵯峨仙翁寺山指図写 一鋪
J 七    寛永一五・五・二一 洪恩院領嵯峨仙翁寺山指図写 一鋪
J 八              嵯峨中寺社図 一鋪
J 九    文化五・正     松前蝦夷其外島々図 一鋪
J 一四             八幡社・八幡山近傍絵図 一鋪
J 二三   寛文六・八     鹿王院分山之差図 一鋪
 以下、撮影史料について、コメントを加える。
 「玉隠和尚語録」については、一九九八年三月にマイクロフィルム撮影を行い、写真帳「鹿王院所蔵史料」九(六一七〇・六二―四―九)として架蔵している。しかし、九丁裏と一〇丁表との見開き一コマ分の撮影漏れがあったため(九丁表・一〇丁裏から透けて見える裏の文字によって撮影漏れは明らかであった)、デジタルカメラによる再撮影を行った。
 書誌を記すと、袋綴装(五ツ目)一冊。料紙は楮紙、墨付一二一丁。表紙は薄い藍色、見返共紙。外題は貼題箋で「玉隠和尚語録」。第一丁表右下に単郭長方朱印「霊亀山天龍寺」。地に墨書で「玉隠全」。
 本所謄写本「玉隠和尚語録」(二〇一六―二七二、大正四年一〇月、上村観光氏蔵本の謄写)と簡単に比較すると、本書の第二一丁表第九行の一行分(謄写本第二七丁表第八行)及び第五八丁表第一行の一行分(謄写本七二丁裏第七行の後)が脱落している。特に前者は文中の一節が本書の字配りで一行分脱落しており、謄写本の祖本は本書と同じ改行であった可能性が高い。また、謄写本には校合の注記が朱書によって施されているが、いくつかの文字の異同をのぞき、そのほとんどが本書と一致し、脱漏を補うものはすべて一致する。本書一一丁裏第一二行(謄写本一五丁裏第五行の後)及び三四丁裏第九行(謄写本第四四丁表第八行の後)の各一行分に相当する脱落も朱書によって補われている。なお、謄写本に比して本書に「何紙分かの脱落がある」(『東京大学史料編纂所報』第五三号四〇頁)とするのは誤りである。
 次に、Jに分類された絵図類のうち、永禄三年の年紀をもつ三鋪について、その当時の姿を表現した史料かどうかの判断は難しい。鹿王院は、北方に位置する大覚寺との間で、境界領域に位置する、仙翁寺村八幡宮や西楽寺、その後背地の山林支配をめぐり、相論を継続した。近世にも一八世紀前半を中心に、たがいに中世史料を証拠に掲げて訴訟を行っており、関連史料は鹿王院に多く残される。訴訟の分析を進めることによって、右に掲げた絵図の性格は明らかになると期待される。
2 選佛寺所蔵史料の調査・撮影
 上京区北町の選佛寺に赴き、ご所蔵史料の調査・撮影を行った。選佛寺は臨済宗建長寺派。開山は常陸法雲寺(勧請開山中峰明本)三〇世仏日純陀(一六九五~一七七〇)で、一七六一年(宝暦一一)に現在地に移転した。寺史は、先々代による『大雄山選佛寺誌』(一九四七年、一〇一五―一八七)に詳しい。おおくの文化財を所蔵されている。今回、先代のご著書『平安京 西の京厨町物語』などを拝受した。調査・撮影をお許ししただいたご住職木原大萌氏に厚く御礼申し上げる。
 撮影の略目録を掲げる。南禅寺幻住庵伝来の中峰明本頂相(重要文化財)は、京都国立博物館寄託のため除外した。
一 中峰明本頂相 一幅
   中峰自賛、仏日写、明和七年か
一 仏日純陀頂相 一幅
   仏日自賛、賛は「開山仏日和尚語録」所収 一 元文二年一一月五日 桜町天皇綸旨 一幅
   仏日への紫衣勅許
一 小野小町像 一幅
   源秀行画、明和九年冬 澄覚寄進
一 中峰明本墨蹟 一幅
一 渡宋天神像 一幅
一 月・郭公彫刻 一組
一 郭公縁起 一巻
一 下火法語例文集 一冊
一 天満宮御自作御神像幷霊宝略御伝記(版本) 一冊
(末柄豊・山家浩樹・渡邉正男)


『東京大学史料編纂所報』第54号