9.愛知県立美術館所蔵資料の調査

二〇一七年一〇月一七日、勧修寺文書聖教調査団の上島享氏・佐藤愛弓氏
とともに、愛知県美術館所蔵の木村定三コレクション中の資料を調査した。
同館・副田一穂氏ほかに懇切にご対応頂いた。ここに御礼申し上げる。
○仏説聖天行法功徳円満秘密経
※巻子一軸。木箱入り、二八・三×三・七×三・八、蓋ウハ書「聖天行法功
徳円満秘密経 一巻」。仮表紙(巻くのみで貼り継がず)「仏説聖天行法功徳
円満秘密経/奥書延享二年歳舎乙丑十月二日加修復了、/僧正賢賀生年六十
二」。後補素紙表紙(破損)、直書墨書外題残画あり(賢賀修補ならん、さら
に素紙を継ぐ)。本紙全二紙、楮打紙。二五・二×①五一・〇+②一一・三。
裏打ちはせず。銀界あり、界高一九・二、界幅一・九、前後は余白を長めに
取り、行数を最初から予定した料紙である。本紙端裏墨書外題「仏説聖天行
法功徳円満秘密経」(本文と別筆か、賢賀筆にあらず)および箱朱注記『行箱』。
首題・尾題「仏説聖天行法功徳円満秘密経」。巻首・巻尾に朱方印『勧修寺
大経蔵』、巻尾に朱方印『月明荘』。巻末補紙に識語「延享二年歳舎乙丑十月
二日加/修復了、僧正賢賀〈生年/六十二〉」。書写年代は平安時代後期に遡
るか。『木村定三コレクション 仏教美術』図版一一四(整理番号M989)と
して本紙部分の全巻をカラーで掲載。『勧修寺大経蔵目録』の「行」箱に同
書名が見え、『弘文荘在庫古書目録』九(一九三七年)二〇として載り、反
町茂雄の手を経て伝わったもの。
○春日宮曼荼羅
※掛幅一軸。絹本著色。『同』図版103(整理番号M2121)。

(藤原重雄)

『東京大学史料編纂所報』第53号