53.ピーボディ・エセックス博物館所蔵文書の調査

二〇一五年七月二十一日から二十四日、基盤研究🄑「東インド会社解散と出島商館の変容─史料構造からみる近世日蘭関係史料」による調査の一環として、ピーボディ・エセックス博物館(米国マサチューセッツ州セイラム)フィリップスライブラリーにおいて、同館所蔵文書の調査を行なった。
 オランダ東インド会社解散前後の一七九七年から一八〇七年の間、フランス革命に始まるヨーロッパの変動の中で、オランダはバタフィアから長崎へ定期船を送ることができず、アメリカ等の中立国の船と傭船契約を結び、かろうじて出島との接触を保っていた(金井圓『日蘭交渉史の研究』第九章~第一一章)。この時期に日本に来たアメリカ国籍の傭船八隻のうち、フランクリン号(一七九八年)、マサチューセッツ号(一八〇〇年)、マーガレット号(一八〇一年)に関する史料、及びこの時期に日本への航海に関わったジェームズ・デヴロー、サミュエル・ガードナー・ダービー、ウィリアムとジョージのクリーヴランド兄弟等に関連する史料が、これらの船の人々が持ち帰った日本産品とともに、同博物館に所蔵されている。本所からは同館所蔵史料について、一九六七年、一九七六年に金井圓氏が、二〇〇六年に横山伊徳氏が調査している。今回調査したのは主に以下の史料群である。
① Devereux Family Papers 1789-1863(Call number MH 1)
  フランクリン号及び同船船長デヴローの関係史料
② East India Marine Society Records (Call no. MH88)
  マリン・ソサエティに提出された航海日誌がまとめられている。
③ Derby Family Papers (Call no. MH 37)
  マーガレット号及び同船船長ダービーの関係史料
④ George Cleveland Diary 1838 (Call no. DIA44)
  マーガレット号書記として来日したジョージ・クリーヴランドの回想記
⑤ The Historical Collections of the Essex Institute
  エセックス・インスティテュートによって刊行された、地域の歴史に関わる史料情報の雑誌
 七月二十五日には、博物館において、日本よりの将来品等の展示を見学した。本調査に際しては、同館ライブラリアンKathy Flynn 氏、Catherine Robertson 氏にお世話になった。また小林淳一氏(江戸東京博物館)より事前に多くのご教示を得た。記して謝意を表したい。
(松井洋子・松方冬子)

『東京大学史料編纂所報』第51号