70.スペイン・ポルトガル所在日本関係史料の調査

二〇一二年一一月一二日~同二四日、スペインおよびポルトガルにおい
て、日本学士院より派遣経費を受け、日本関係史料の調査を実施した。
スペインでは、まず国立図書館において、同国王に関わる文書集
(MSS/174 75)と、コリャード徴収文書と総称される文書群(MSS/18727/1-
4)を調査した。次に、同国立歴史文書館において、一六三〇年一月一一日
付の、日本のキリスト教徒殉教に関する文書(Clero:Jesuitas:55:Doc. 29)を
調査した。そして、イエズス会トレド管区文書館において、コーロス徴収文
書と総称される文書群(E2:103:7, 10)を調査した。ポルトガルでは、国立文
書館総合本部において、インド関係文書(PT/TT/MMCG/6F)、フランシ
スコ・ロドリゲスの回想録(PT/TT/MSLIV/0805)、ジョアン・ジラン・
ロドリゲス書翰(PT/TT/MSLIV/1951)等を調査した。また、同国立アジュ
ダ図書館において、アジアにおけるイエズス会士の書翰集(49-IV-49, 50)を
調査した。
このなかでも特筆すべきは、イエズス会トレド管区文書館所蔵のコーロス
徴収文書である。同文書について、これまで日本では松田毅一の調査記録
(『在南欧日本関係文書採訪録』養徳社、一九六四年)およびその研究成果
(「元和三年、イエズス会士コーロス徴収文書」『近世初期日本関係南蛮史料
の研究』風間書房、一九六七年)が知られていたが、今回の調査により、現
在の架蔵番号はかつて松田が調査した際のもの(Legajo1051:10)とは異なっ
ている点と、松田の調査の際に所在不明とされた豊後国南郡および肥前国夏
井に関わる文書は現存している点が明らかとなった。

(岡本 真)

『東京大学史料編纂所報』第48号