6.佼成図書文書館所蔵史料の調査

二〇一一年一〇月一七日、佼成図書文書館(東京都杉並区、同年一二月に
佼成図書館から改称)所蔵の大門寺一切経を調査した。御高配を賜った館長
長沼克宗氏、お世話いただいた清水道記氏ほか関係各位に篤く感謝申し上げ
る。今回は、国際仏教学大学院大学の落合俊典教授、同日本古写経研究所研
究員の上杉智英氏・南宏信氏のご同行を仰ぎ、種々ご教示・ご指導を頂いた。
同大では大門寺一切経の集成も進められており、詳細な書誌は改めてご紹介
があることと思う。ここでは、登録上の書名と奥書および伝来に関わる事項
についてのみ報告する。
大門寺一切経は、江戸時代に寺を出て、相当部分が元興寺文化財研究所編
『大和郡山市西方寺所蔵一切経調査報告書』(一九八四年)として目録となっ
ている。この他に巷間に流れたものについては、石田茂作「摂津大門寺一切
経に就いて」(『仏教史学』三、一九五〇年。『仏教考古学論攷』三・経典篇、
思文閣出版、一九七七年、再録)、田中塊堂「大門寺一切経に就いて」(『日
本歴史』一六四、一九六二年)および同編『日本古写経現存目録』(思文閣、
一九七三年)がまとまったものを紹介する。末永雅雄「摂州大門寺一切経抄」
(『史泉』五六、一九八一年)は、石田論文にほぼ含まれるが、奥書図版を掲
載し、現在は末永氏より大門寺へ寄贈される。『新修茨木市史』四・史料編・
古代中世(二〇〇三年)は、西方寺目録・『日本古写経現存目録』より抄出
したもので、地名考証が加わる。最近では、櫛木謙周「大門寺一切経にみる
社会関係」(『新修茨木市史 年報』八、二〇一〇年)に奥書の分析がある。
以下に掲げる書目は、特に注記したもの以外は、これら目録に見当たらない。
【〇一七〇~七二】大門寺一切経 (古一〇四−一~三/貴一−六(A))
※三巻一箱。箱蓋ウハ書「大門寺一切経」、箱蓋裏書「昭和廿八年七月拝観
/村田正志」、箱小口貼紙「第六十八号/鎌倉時代/大門寺一切経/十誦羯
磨比丘要用/阿毘達磨順正理論巻第七十八/阿毘達磨蔵顕宗論巻第七/弘安
四年願主長賢」。箱中に大門寺住職添野智光よりの葉書あり(昭和二十八年
二月二十四日消印)。資産ラベル「三一−一〇五」。
①奥書なし。
②奥書「弘安四年閏七月九日一交了、勧進僧長賢/右志者、為父母師長出離
生死往生極楽也」。
③奥書「一交了」、「弘安四年壬七月十一日 大門寺一切経之内」。
【〇一七三~七七】大門寺一切経 (古一〇八−一~五/貴一−六(A))
※五巻一箱。箱蓋ウハ書「大門寺一切経」、箱蓋裏書「昭和廿八年七月拝観
/村田正志」、同貼紙墨長方印「古香堂文庫/飯塚文治郎」、箱小口貼紙「第
八十八号/鎌倉時代/大門寺一切経之内/雑阿毘曇忩〔心〕賢聖品第五(①〔1〕)
/ 婆沙第十四(②〔3〕)/大毘婆沙論巻第六十六(③〔5〕)/根本説一
切有部毘〔奈脱〕耶新〔雑〕事巻第十二(④〔2〕)/阿毘達磨発智論巻第
十二〔一〕(⑤〔4〕)/(朱方印)『古香/堂印』」。〔 〕は現在の順序。箱
中に前掲『仏教史学』三号があり、大門寺住職添野智光の封書(昭和二十七
年四月二十九日消印)ほか、参考資料の抜書を挟み込む。
①〔1〕奥書なし。
②〔3〕奥書「弘安五年十二月日書写了、/摂津国大門寺一切経内 一校」、
後筆奥書「元禄〈辛未〉仲春廿二日〈一交〉 仏船」。
③〔5〕・⑤〔4〕奥書なし。
④〔2〕奥書「大門寺一切経内/弘安七年六月九日一交畢、勧進僧長賢〈生
年/卅七歳〉」。
【〇八七八】大般泥洹経 二 (古六九/貴一−五(D))
※一巻。奥書「願主経尊」(本文と別筆)。箱蓋ウハ書「大般泥洹経 藤原時
代/願主経尊/大門寺一切経ノ内」、箱蓋裏書「昭和四十二年七月十四日/
古香堂文庫主人 飯塚文治郎(朱方印)『飯塚/古香』」、箱小口貼紙「第二
百九十五号/藤原時代/大般泥洹経/願主経尊/大門寺一切経ノ内」。資産
ラベル「三一−七〇」。
【〇八八五】遺教経論 (古七九/貴一−五(D))
※一巻。奥書「願主経尊」(本文とは別筆。本文も一筆ではない)。箱蓋ウハ
書「遺教経論 藤原時代/願主経尊」、箱蓋裏書「昭和四十二〈丁未〉年七月、
古香堂文庫主人/飯塚文治郎(朱長方印)『飯塚/之印』/大門寺一切経ノ
内」、箱小口貼紙「第四百五十号/藤原時代/遺教経論一巻/願主経尊/大
門寺一切経/(朱長方印)『古香堂××(貼紙にて見えず)』」。資産ラベル「三
一−八〇」。
【〇八八七】海竜王経 一 (古二四/貴一−五(D))
※一巻。奥書「願主経尊」(本文と別筆)。箱蓋ウハ書「海竜王経行品巻一 
藤原時代/願主経尊」、箱蓋裏書「昭和四十二年七月/古香堂文庫主 飯塚
文治郎(朱方印)『飯塚/古香』」、箱小口貼紙「第三六○号/平安朝時代/
海竜王経/行品巻一/経尊トアリ/(朱長方印)『古香×××』」。資産ラベ
ル「三一−二五」。石田論文二三に相当、田中目録なし。
【一〇六七】阿毘達磨倶舎論 十三 (古六八/貴一−五(D))
※一巻。奥書「願主経尊」(本文とは別筆。本文も一筆ではない)。箱蓋ウハ
書「阿毘達磨倶舎論中分別業品 藤原時代/願主経尊」、箱蓋裏書「昭和四
十二年七月、古香堂文庫主人/飯塚文治郎(朱方印、印文不明)/大門寺一
切経ノ内」、箱小口貼紙「第二百九十四号/藤原時代/阿毘達磨倶舎/論中
分別業品/願主経尊/大門寺一切経ノ内/(朱長方印)『古香堂××』」。資
産ラベル「三一−六九」。

(藤原重雄)

『東京大学史料編纂所報』第47号