東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

東京大学史料編纂所影印叢書 久芳文書・佐藤文書

 影印叢書は、本所の所蔵にかかる原本史料を精選し、影印によって刊行するものであり、本冊には、『久芳文書』『佐藤文書』および附録若干を収めた。
 『久芳文書』(百二十六点)は、安芸国久芳(広島県東広島市)の出身で、戦国期に毛利氏に属し、江戸期も引き続き萩藩毛利氏に仕えた武士、久芳氏が伝えた文書である。また、『佐藤文書』(百十一点)も、毛利氏に属した武士、佐藤氏に伝わった文書である。
 戦国期の両氏は、主人の指示を受けてさまざまな実務を担当する、中級の家臣であったようだ。『久芳文書』にも『佐藤文書』にも、毛利元就・隆元・輝元、吉川元春、小早川隆景など、戦国期の毛利一族が両氏宛てにしたためた書状類を、数多く見ることができる。自筆と判断されるものや、父子または兄弟が連署したものも少なくない。毛利一族の書状類を、これだけの規模で、しかも良質の図版で見ることができる出版物は、過去に例がないと思われる。書状の様式や筆跡、花押などを観察する上で、本書は従来の出版物にはない利便性を備えているはずであり、毛利氏の研究者を中心に、各方面で歓迎されるものと信じる。
 書状の内容は、毛利氏が久芳氏を山陰に、佐藤氏を九州に派遣したことにかかわるものが目立ち、それぞれの働きぶりを、詳しく知ることができる。毛利氏の勢力圏が広がってゆく中で、その最前線に彼ら中級家臣の奮闘があったことを、この両文書はよく示している。なお、久芳氏は、毛利氏が台頭する以前は、大内氏に属していた。このため、『久芳文書』には、大内政弘の下文や感状など、同氏関係の文書も見ることができる。
 以上のほかにも、本所には毛利氏・大内氏関係の原本史料が若干あり、その中から大内義隆書状など四点を、附録として収めた。これらは、いずれも特定の文書群に属さず、それぞれ単独で蔵書登録されているものである。蒐集文書・成巻文書の一部として存在している毛利氏・大内氏関係史料については、当該の文書群の中で扱われるべきであると判断し、それらを抜き出して本書に収めることは控えた。
 なお、良質な図版の提供が本叢書のねらいであることから、解説は意識的に簡潔なものとした。各位のご理解を得たい。
(カラー図版二頁、例言・目次一二頁、図版二九八頁、解説一六頁、本体価格二五、〇〇〇円)
担当者 鴨川達夫


『東京大学史料編纂所報』第45号p.47