東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

東京大学史料編纂所影印叢書 平安鎌倉古文書集

 影印叢書は史料編纂所が所蔵する原本史料等を精選し、影印によって刊行するものであるが、本冊には、「平安鎌倉古文書集」と題して、『近江国愛智庄立券文』『尾張国郡司百姓等解文』『山辺姉子畠地売券』『古文書雑集』『東大寺古文書』『東大寺田券』『源範頼下文』『山城国西観音寺文書』『源頼朝下文』『太政官牒』『北野宮寺政所下文』『八幡宮寺政所供料充行状案』『古文書 鎌倉・室町時代』『中原遠忠注進状』『東大寺大勧進聖守書状』『蟇沼寺文書』『安樂寿院文書』『東大寺造営領周防国文書』『僧玄海笛譜等注文』『審盛授性範印信』『洞院公賢奏事目録』『東大寺西室雑掌重申状案』『東大寺八幡宮神輿帰坐文書案』『隆恵書状』『後宇多上皇院宣』を収めてある。本所は原本の所蔵を目的とする研究機関ではない。従って、本所に所蔵される原本類の多くは研究や標本としての目的をもって購入されたものや、その研究目的に賛同された方々の好意により寄贈されたものなどであり、ある目的を持って系統的に蒐集・収蔵されたものではない。そのため、本書収録の書目も雑多なものとならざるを得ない。しかし、これら雑多な書目に適切な解説を施 し、より研究しやすい形態で公開することもまた本所ならではのことと考える。
 本冊に於ける各書目の配列は編年を原則としたが、複数の文書を収める成巻文書等については、各書目に収められる最古の文書の成立年代等により配列し、収録の文書等の釈文については、原則としてこれを掲載していない。以下に、本冊に収録した書目若干について、簡単な紹介を掲げる。
 『近江国愛智庄立券文』(一巻八通)は、同郡大国郷・養父郷にかかる墾田売券八通からなるもので、これらの売券は村落内における階層分化や土地の集積、また在地支配秩序を検討するに際しての貴重な史料群である。
 『尾張国郡司百姓等解文』(一巻)は、尾張国の郡司や有力農民らが、尾張守藤原元命の暴政を訴え、その罷免を求めた文書で、嘉元二年(一三〇四)具注暦・嘉元三年見行草の紙背を利用して書写されている。本古写本は書出から第五条途中までを欠くとともに、末尾二紙に書状の紙背を利用した補写の部分がある。補写部分の奥書から応長元年(一三一一)以前の書写と知られるが、紙背の嘉元三年見行草も現存する最古の見行草(暦計算の草稿)として貴重である。
 『古文書雑集』(一巻一二通)は、平安時代から桃山時代にいたる文書を収めるが、大治四年(一一二九)の観世音寺公文所下文を始めとして、その過半は東大寺伝来の文書や聖教が占めている。
 『山城国西観音寺文書』(二帙一八通)は、山城国乙訓郡山崎に所在し、今は廃寺となった慈悲尾山西観音寺に伝来した文書で、鎌倉時代から江戸時代までの文書を収めている。同寺旧蔵の文書は京都大学文学部を始め、仙台市大梅寺等の各所に所蔵されるが、収録の文書はこれら各所に分蔵された史料群の理解を助けるものが多い。
 『古文書 鎌倉・室町時代』(一巻一四通) は、鎌倉時代から室町時代までの文書を集成のうえ成巻したもので、東大寺や興福寺を始めとする大和国に由来するものを多く収めている。本書目の解説には、修補に際しての解体で得られた知見が利用され、成巻以前の伝来に関する重要な手がかりとなっている。
 『蟇沼寺文書』(一巻一四通)は、本来は現に広島県三原市本郷町に所在する東禅寺に伝来したもので、蟇沼寺はその異称であり、弘安五年の行阿寄進状を始めとして、鎌倉時代から南北朝時代の文書を収めている。
 『安樂寿院文書』(一帖二巻)は、鳥羽上皇の御願寺である安楽寿院の所領に関わるもので、亀山上皇より安楽寿院の奉行に補せられた高倉永康の家系に伝来した史料である。鎌倉時代の成立と推定される「安楽寿院諸堂舎所領目録」(一帖)を始め、「真幡木・芹川・上三栖三ヶ荘相伝知行支証案」(一巻)、「真幡木荘検注目録案」(一巻)を収めている。
 『洞院公賢奏事目録』(一巻二通)は、本所未整理史料の中から発見された新出のもので、徳治二年(一三〇七)に洞院公賢が後宇多院に奏上した奏事目録の原本であり、一四世紀初頭の奏事目録として貴重である。
(カラー図版二頁、目次八頁、図版二七二頁、解説五〇頁、本体価格二五、〇〇〇円)
担当者 厚谷和雄・井上聡・遠藤珠紀・遠藤基郎・加藤友康・末柄豊・高橋敏子・高橋典幸・田島公・西田友広・伴瀬明美・藤原重雄・山口英男


『東京大学史料編纂所報』第45号p.46~47