東京大学史料編纂所

72.鹿児島史料調査

二○○九年一月二三日・二四日、鹿児島県鹿児島市に出張し、鹿児島県歴史資料センター黎明館・鹿児島県立図書館郷土資料コーナーで南島画像関係資料の調査を行った。
 一月二三日、鹿児島県歴史資料センター黎明館調査史料室において、同館所蔵の都成植義『奄美史談』を閲覧した。同書は、内倉昭文氏により「黎明館所蔵「奄美史談」(写本)をめぐる一考察-特に「南島雑話」との関わりを中心に-」『黎明館調研究報告』一八集(鹿児島県歴史資料センター黎明館、二◯◯五年三月)において紹介されている。『奄美史談』は名瀬市長を務めた都成植義(一八六六~一九一四年)が著述した近代の奄美史研究の出発点となる書である。昭和八年(一九三三年)に永井龍一(兄が都成の義理の甥永井亀彦)により謄写版(永井本)で出版され、永井本は一九六四年に名瀬市史編纂委員会編『奄美史談・徳之島事情』に収められた。永井本の都成植義「緒言」は明治三十三年(一九○○年)に記されている。一方、黎明館本は石井達宗(不詳)が一八九六年に第七十九国立銀行大島支店にて書写した写本であり、明治二十五年(一八九二年)の島司大海原尚義(一八九○年五月~九四年九月在任)撰の叙が添えられ、都成の緒言は明治二十四年十二月付けである。明治二十四年緒言本(黎明館本の親本)を経て、明治三十三年緒言本(永井本の親本)へと大幅に増補改訂されたことがわかる。一方、鹿児島大学所蔵『南島雑話』の親本は明治二十二年六月に木脇啓四郎が書写し終えた大島島庁本であり、『奄美史談』と大島島庁本『南島雑話』の関連が想定される。黎明館本には「南島画譜」を出典とするノロ辞令書・享保五年出土石碑・首枷足枷図などが収録されている。これらの図画は『南島雑話』(名越左源太稿本と伊藤助左衛門稿本の取り合わせ本)のものなので、「南島画譜」は『南島雑話』の一部を示すと推定される。黎明館本には、名瀬の見取り地図である「大島首府金久伊津部図」、「奄美諸島図」も添付されている。今回は、黎明館の許可を得て、委託撮影し、写真版を史料編纂所に納めた。調査にあたっては、黎明館調査史料室長徳永和喜氏にご指導いただいた。
一月二四日、鹿児島県立図書館郷土資料コーナーにおいて、『南島雑話』関係資料、名越左源太が連座したお由良騒動に加わり切腹した山田清安関係資料の閲覧を行った。
(石上英一)


『東京大学史料編纂所報』第44号