東京大学史料編纂所

29.「鳥居大路文書」・「末永家文書」・妙智院所蔵史料の調査・撮影

二〇〇八年七月一七日・一八日、京都国立博物館に赴き、同館所蔵の「鳥居大路文書」(B甲1008)・「末永家文書」(B甲334)の調査・撮影を行なった。鳥居大路文書は、上賀茂社神官鳥居大路家の文書であり、賀茂社領に関わる仁平二年~文明一三年までの文書一二通があった。末永家文書は毛利・小早川に仕えた末永家の文書群である。本文書群の詳細については、羽田聡「(確認中)」(『学叢』三一号、二〇〇九年)参照。以下におおよその目録を掲げる。
鳥居大路文書
(一)仁平二年二月日 周防国庁宣 
(二)仁平二年八月一日 周防国庁下文
(三)文治二年九月三日 源頼朝下文 
(四)建久四年八月五日 左弁官下文 
(五)建保四年九月一九日 後鳥羽院院宣 
(六)天福二年六月一八日 延暦寺政所下文
(七)弘長二年一二月一〇日 後嵯峨上皇院宣
(八)嘉元三年八月八日 亀山院院宣
(九)明徳四年六月二一日 足利義満御判御教書
(一〇)応永元年一一月二六日 管領斯波義将施行状
(一一)応仁二年六月六日 後花園院院宣
(一二)文明一三年一一月二八日 賀茂社領播磨国塩屋庄代官赤松政秀請文
末永家文書
(一)七月二日 某書状
(二)五月一三日 小早川隆景書状
(三)一〇月二日 毛利輝元書状
(三)九月一三日 小早川隆景書状
(四)三月一〇日 小早川隆景書状
(五)四月三日 小早川隆景書状
(六)一一月二六日 小早川隆景書状
(七)三月廿日 小早川隆景書状
(八)三月一三日 小早川隆景書状
(九)年月日未詳 某書状
(一〇)年月日未詳 某書状
(一一)五月二七日 毛利元就感状
(一二)正月一九日 鵜飼元辰書状
(一三)一〇月二五日 鵜飼元辰書状
(一四)寛永六年五月一六日 了仲遺言
(一五)五月三日 玄斎書状
(一六)六月二九日 玄斎書状
(一七)一二月一三日 小早川隆景書状
(一八)五月一一日 吉川元春・元長書状
(一九)一四年五月二三日 周防国都濃郡富田保打渡坪付
(二〇)享保三年潤一〇月一四日 末永家代々忌日
(二一)末永家祖先事
(二二)末永系図
このほか封紙などあり
あわせて昨年に引き続き、同館に寄託中の妙智院所蔵「策彦和尚行実」(02-869)、「策彦和尚入明記録及送行書画類」(02-331/02-332)の調査・撮影を行なった。
策彦周良は、文亀元年(1501)生まれ。心翁等安の法嗣で、妙智院第三世となり、天正七年(1579)妙智院で寂した。謙齋とも号する。天文八年度遣明船において副使を、ついで天文一六年度遣明船において正使をつとめたことで知られている。「策彦和尚行実」は元亀四年(1573)四月十六日の年記を持つ策彦周良の自伝と、永正六年(1509)十二月二四日「心翁等安授周良安名」、永禄庚申(1560)八月初吉「策彦周良授令彰安名」を併せ一巻に仕立てたものである。なおこの自伝と同文の記述が「策彦和尚初渡集」嘉靖一八年(1539)八月一一日条に見られる。「策彦和尚入明記録及送行書画類」は、四五種の史料からなる史料群である。策彦周良が遣明使節として明に赴いた際の旅日記(策彦和尚初渡集・再渡集)をはじめ、策彦周良が使節を務めるにあたり参考のために筆写したと思われる、永正三年度の遣明使節が明側に提出した文書の抄録集である「壬申入明記」、寛正度遣明船の派遣に関わる記録である「戊子入明記」など、遣明船関係史料を中心に、策彦周良の詩集や、策彦周良手沢本などから構成される。日明関係史研究の基礎をなす貴重な史料群である。解題・翻刻等(史料群全部ではない)については牧田諦亮『策彦入明記の研究上・下』(法蔵館、一九五五年)参照。また史料群の全貌については伊川健二「天龍寺妙智院所蔵の史料調査報告」(『八―一七世紀の東アジア地域における人・物・情報の交流』科研報告書、代表村井章介、二〇〇四年)が詳しい。本史料群の一部は江戸時代からしばしば写されており、近代にはいると、外務省が「戊子入明記」などを謄写している(現・内閣文庫所蔵)。本所においても早く、一八八五年から八八年にかけて、妙智院に出張し、本史料群に含まれる記録類の多くについて影写本・謄写本を作成した。大日本仏教全書所収の策彦和尚初渡集・再渡集などは本所の影写本を底本に刊行されたものである。また書画についても、模写の作成・写真の撮影などをしている。ただ史料群全体の撮影は、本所としてこれまで行なっていなかった。以下に撮影目録を掲げ、併せて本所でかつて影写・謄写などしている場合は架蔵番号を付す。
〇二‐八六九  策彦和尚行実 一巻
〇二‐三三一  策彦入明記録及送行書画類三十一種
(一)四明梅崖筆怡齋号    一巻
(二)策彦周良筆偈      一巻
(三)策彦周良像       一巻   *模写(呂-73)
(四)孔子家語        一冊
策彦和尚略伝           *謄写本(2016-516)
(五)策彦周良筆漢詩・蓬莱樹 一巻
(六)策彦周良筆漢詩・試灯  一巻
(七)妙智院宛書状      一巻(一九通所収)
            *影写本(3071.62-19-1)妙智院文書乾のうち
(八)蘭亭記         一冊
(九)円通懺摩        一冊(折本)
(一〇)聚分韻略並雙璧集   一冊
(一一)陳白小回向      一冊(折本)
(一二)沿途水駅       一冊 *謄写本(2045-54)
(一三)大明譜        一冊 *謄写本(2051.9-93)
(一四)下行価銀帳      一冊 *謄写本(2053-194)
(一五)松齋梅譜       一冊
(一六)謙齋雑稿       一冊 *謄写本(2034-100)
(一七)大明別幅并両国勘合  一冊 *謄写本(2051.9-92)
(一八)戊子入明記      一冊 *謄写本(2051.9-115)
(一九)壬申入明記      一冊 *謄写本(2045-34)
(二〇)渡唐方進貢物諸色注文 一冊 *謄写本(2098-9)
(二一)策彦和尚初渡集下写  一冊
(二二)謙齋詩集       一冊 *謄写本(2034-106)
(二三)謙齋南遊集      一冊 *謄写本(2034-101)
(二四)聚分韻略       一冊
(二五)策彦和尚聯句     六紙
(二六)夢想聯句       一巻
(二七)贈策彦周良勅書    一巻
(二八)策彦和尚七渡坐具 
(二九)策彦和尚渡唐坐具
(三〇)策彦拝領銀並菊花
(三一)明国諸士送行文    一巻
〇二‐三三二  策彦入明記録及送行書画類十四種
(一)入明略記     一巻 *影写本(3071.62-19-2)妙智院文書坤のうち「一番渡唐・二番渡唐」と同。
(二)策彦和尚初渡集上・中・下・下之下  四冊  *影写本(3045-4)
(三)策彦和尚再渡集上・下        二冊  *影写本(3045-5)
(四)駅程録      一冊 *謄写本(2045-53)
謄写本(2071.62-6)妙智院文書のうち
(五)晩過西湖詩    一巻 *台紙付写真(240-1280)
(六)送別画      一巻
(七)誌別二字     一巻
(八)送別詩      一巻 *模写(呂-458/波-178)
(九)衣錦栄帰図    一巻
(一〇)策彦帰朝図   一巻 *模写(仁-113/呂-259/以-161)
台紙付写真(240-1278/240-1279)
(一一)衣錦栄帰序並詩 一巻 *影写本(3071.62-19-2)妙智院文書坤のうち
(一二)謙齋記     一巻 *影写本(3071.62-19-2)妙智院文書坤のうち
(一三)送朝天客詩並序 一巻 *影写本(3071.62-19-2)妙智院文書坤のうち/謄写本(2071.62-6)妙智院文書のうち
(一四)城西聯句    一冊 *謄写本(2039-4)一部のみ
貴重な史料の調査・撮影の御許可を賜った妙智院住職島見周悦氏、昨年に引き続き、お世話になった京都国立博物館羽田聡氏に深く感謝申し上げる。
(渡邉正男・中村尚暁・遠藤珠紀・須田牧子)


『東京大学史料編纂所報』第44号