大日本史料 第九編之二十五

本冊には、後柏原天皇大永三(一五二三)年年末雑載のうち、年貢・諸役(承前)、寄進、相博・譲与、貸借、売買、訴訟、雑に関する史料、および大永三年の補遺を収録した。

『大日本史料』は、歴史上の事件を年月日順に掲げ、これに関連する史料を排列するという体裁をとる史料集であるが、年月日が明らかであってもこの体裁になじみにくい史料は、「雑載」と称して年末に一括掲載している。利用の便も考慮して、史料の内容によって項目に分けてはいるものの、必ずしも厳密とはいえない。各項目内の排列について、「年貢・諸役」の項目では、まず、所領所職を有する主体によって神社・仏寺・禁中・幕府・諸家に分類排列し、各分類内は主体の所在する国により、同一主体内は、所領所職の種類で分類した上で、その所在する国によって排列し、同一所領所職内は編年順とした。その他の項目では、一部内容によって分類したものもあるが、原則編年順とし、同一年月日のものは史料所蔵者の所在する国によって排列した。ただし、同一所蔵者の史料が複数存在する場合は、初出史料の後にまとめて、編年順に排列した。なお、国の排列については、当該期の情勢を考慮して、以下の通りとした。

山城・大和・摂津・河内・和泉・近江・丹波・丹後・但馬・播磨・淡路・紀伊・志摩・伊勢・伊賀・尾張・若狭・越前・加賀・能登・越中・越後・佐渡・美濃・飛騨・信濃・三河・遠江・駿河・甲斐・伊豆・相模・武蔵・安房・上総・下総・上野・下野・常陸・陸奥・出羽・因幡・伯耆・出雲・隠岐・石見・備前・美作・備中・備後・安芸・周防・長門・阿波・讃岐・伊予・土佐・筑前・筑後・壱岐・対馬・肥前・肥後・豊前・豊後・日向・薩摩・大隅

補遺には、第九編之十九から二十四に収録すべきもので脱漏したものを収めた。このうち「二水記」について、二十編纂中に、宮内庁書陵部所蔵柳原本に、七月から九月までと一二月二五日の記事が、京都大学所蔵平松本に、七月から一二月の記事が存在することがわかった。以後はできる限り収めるように努めたが、月次の和歌御会や御楽などは、年初の綱文にそれ以降の記事を合叙するという体裁をとったため、収録箇所が変則的となってしまったものもある。たとえば、月次御楽の記事は、二月一〇日「御楽始」の条に二月から六月を(十九、一二九〜一三五頁)、七月二九日「月次御楽」の条に八月と九月を(二十、二八七〜二八九頁)合叙したが、一二月については、二月一〇日条に「実隆公記」から関連記事を合叙していたため、同条の補遺として本冊に収めた(二二八〜二二九頁)。注意されたい。

「仏寺」には、岩瀬文庫所蔵洞春寺旧蔵本を底本として、建仁寺住持月舟壽桂の「月舟和尚語録」から、大永三年の記事をまとめて収めた(三八二〜三九七頁)。同写本は、全体にわたって、年紀および内容に関わる注記を有する。それによって記事の年代を特定し、収録した。同書の写本として、本所には上村観光氏所蔵本(謄写本、二〇一六―一六)および建仁寺所蔵本(謄写本、二〇一六―四三七)を架蔵するが、前者には該当記事がなく、後者には記事自体は存在するものの注記の一部を欠く。本写本独自の注記の中には、寺内の紛争によって出奔した壽桂を、細川高国・尹賢が迎えに行き、帰寺させた(三九四頁)など、法語の背景を伝えるものがあり、興味深い。

なお、紙幅の都合上、「福智院家文書」所収「寺社公私雑記」など、近日まとめて翻刻刊行される予定のある史料は収録を見合わせた。

(目次一二頁、本文四三八頁、本体価格一〇、二〇〇円)

担当者 渡邉正男・須田牧子

『東京大学史料編纂所報』第44号 p.28