東京大学史料編纂所

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刊行物紹介

花押かがみ 七 南北朝時代 三

 『花押かがみ』は、各時代の主要な人物の花押を、原則的に、原本より原寸大に影印し、死歿年月日順に配列するものである。
平安時代、鎌倉時代一~三、南北朝時代一・二の刊行に続き、その第七冊目にあたる本冊は、南北朝時代三として、延文四年 正平十四年(一三五九)から応安七年 文中三年(一三七四)までの主要な人物三六七名の花押を収載した。編纂の体例は既刊第一冊と同様であり、収載する花押は、その人物の花押を代表する形のものを選び、その形に変化のある場合や、互いに参照して運筆の順をうかがうことのできる場合は、必要に応じて複数の花押を掲げ、厳密に花押と呼ばれるものの外、自署、草名も適宜採択している。
本文は二段組とし、各段上部には、人名とその通し番号、及び約一、三五〇点の原寸大花押の影印を、各段下部には、依拠した文書・典籍名や所蔵者名などの説明文を配する。各人について称号・本名・法名等、世系、極官極位、出家及び死歿年月日、年齢などの略伝を付記している。
本冊に収載した人物の採録基準を述べれば、ほぼ以下のごとくである。
死歿年月日がわかる人物の花押については原則的に採録する。
公家の花押については、徐々に減少する傾向にあることから可能な限り採録した。特に南朝年号の文書に据えられた花押については、史料の少ない南朝関係史料を補う意味で多く採録した。具体的には、前者にあっては、尊胤法親王・藤原宗範・白河伊俊・度会雅任・御子左為定・吉田為治・洞院公賢・花山院兼信・徳大寺公清・藤原孝守・荒木田守藤・清原良兼・橘知任・勘解由小路光業・甘露寺藤長・荒木田泰朝・賀茂教久・中原師躬・勧修寺経方・亮性法親王・中院通冬・賀茂宗平・三条公秀・藤原有範・四条隆蔭・光厳天皇・御子左為明・二条師基・一条経通・中御門宣明・清閑寺資定・葉室長光・藤原行清・正親町忠季・小槻匡遠・坊城俊冬・四条隆家・洞院実夏・日野時光・荒木田季宗・中御門宗重・度会貞香・高辻国長・聖尊法親王・亮仁法親王・持明院家秀・久我通相・冷泉為秀・勧修寺経顕・町経秀・冷泉守教・二条為忠・後光厳天皇など、後者にあっては、中御門光任・石塔義房・五条良氏・大福寺正雄・楠木正近・頼意・藤原兼頼・世尊寺伊実・中院具氏・岡崎範国・押小路惟季・藤原実秀・藤原顕方・藤原経国・桃井義綱・大河内氏儀・五条頼元・八条実興・西園寺公重・坊門資世・後村上天皇・宇佐公連・坊門親忠・藤原経清・新田義宗・厚東義武・宗頼次・洞院公夏・宗経茂・浅海通智・名和顕興・菊池武平・三条泰季・平成棟・島津親忠・藤原尹房・渋谷重門・菊池武顕・四条隆俊・楠木正顕・菊池武光・菊池武政・中御門経高などである(武家・寺家を含む)。
一方、武家については、室町幕府の主要役職就任者のほか、諸国守護・守護代クラスを目途とした。例えば、宍戸朝里・細川繁氏・和田茂実・仁木頼章・山内資綱・筑後経尚・仁木頼夏・佐竹義篤・大高重成・細川清氏・武田信武・富樫用家・大友氏泰・伊達貞綱・佐志披・杉本貞清・畠山直顕・畠山国清・荒河詮長・大萱清・今川氏兼・島津貞久・吉田秀仲・芳賀高貞・芳賀高家・岡田胤家・長井貞頼・奥貞義・横地直宣・本間季信・横地秀長・本間惟季・能勢頼澄・芥川詮信・藁科貞清・海老名詮頼・長秀連・伊勢宗貞・有元佐兼・佐分利康棟・渋谷重基・松田基連・平経久・宇都宮詮綱・小田知春・上杉朝顕・長尾景忠・高師有・国分胤氏・世良田義政・吉良持家・恵良惟澄・小早川実義・河野通朝・矢野政親・河野通盛・三浦高通・諏訪大進房円忠・小笠原政長・今川範氏・広峯長種・宮兼信・和田重道・熊谷直経・千葉氏胤・高坂氏重・益戸国行・小田知夏・梶原景良・上杉朝憲・里見師義・三戸師景・海老名季明・彦部師朝・三浦貞久・高南重祐・大高重政・大平惟世・二階堂行種・高師義・高師国・武田義武・藤原師章・源朝有・水守氏蔭・大掾高幹・二階堂行春・本間光忠・宇都宮守綱・小野崎泰通・上杉憲将・馬淵義綱・石塔範家・斎藤康行・白井行胤・山内通資・千葉胤継・吉弘氏輔・遊佐国重・山内通継・斯波高経・斯波氏経・斯波義高・吉良貞経・相馬胤頼・斯波直持・武田氏信・大友氏時・平長胤・河越直重・戸次頼時・梅津清景・上杉憲顕・宇野季有・上杉憲重・千葉胤連・山名氏冬・桃井直和・桃井直常・桃井直信・二宮貞家・佐々木氏頼・宇都宮氏綱・国魂隆泰・赤松範顕・尾崎政利・藤原忠広・山名時氏・国分胤詮・宗像氏俊・安威資脩・中沢信綱・赤松則祐・松田資秀・少弐頼尚・海老名氏貞・安富泰重・大友氏継・佐々木高氏・目賀田信良・佐々木氏俊・佐々木定詮・赤松貞範などである。武士の占める比率が圧倒的に高まる。
釈家(寺家)については、旧来からの伝統的な大寺院においては、例えば、隆憲・範宗・清舜・静晴・真顕・経深・禅恵・真瑜・仲我・頼源・定清・実杲・永澄・智円・朝源・良賀・俊然・増仁・頼智・慶運・浄弁・覚雄・懐雅・隆寿・良詮・頼暹・頓阿・頼乗・顕詮・什尊・行慶・成助などの長者・座主・別当・院家などのクラスにほぼ限った。前代に興った新しい仏教運動である、いわゆる鎌倉新仏教に属する僧侶の場合は、例えば、日輪・盛誉・清算・朴艾思淳・頼然・妙実・明賢・日静・良誉・光玄・日祐など、その主要寺院の歴代住持クラスとした。なかでも禅僧は、無涯仁浩・無極志玄・固山一鞏・無底良韶・乾峰士曇・鉄牛継印・岳翁長甫・無徳至孝・方外宏遠・大年法延・平田慈均・古源邵元・東陵永璵・定庵性守・大海寂弘・峨山韶碩・大方韶勲・大智・寂室元光・無夢一清・周場・昌能・大喜法忻・清純・平泉道均・大象宗嘉・太山如元・徹翁義亨・青山慈永・平心処斉・大道一以・西源景師・月庵紹清・太源宗真・大機智碩・自廓・祥山仁禎・黙菴周諭・放牛光林・正堂士顕・古先印元・東伝士啓・帰山光一・定山祖禅など、格段と増加する。
以上のほか、宮河頼直・千代次長祐など赤松・大内氏など有力武将奉行人の花押を収載し、特に足利基氏は二十四、足利義詮は五十九の花押をそれぞれ例示して、変遷の様子を詳細に跡付けた。
また、その人物の花押を選択するに際しては、おおよそ以下の諸点を基準とした。
署判そのものにより人物が特定できるもの、同一人物の多様な形態を反映するもの、変化の推移がわかる場合は変化の最初と最後を示すもの、同一人物の官途が変化するもの、などである。特に、草名、自署、北畠親子などの女性の花押を積極的に採り上げ多く収載するように努めた。
なお、本冊より、製作工程が全面的にDTPに移行した。そのため、掲載した花押の影印画像に関して、従来のものとは若干印象を異にするもののあることを付記する。
更にまた索引・正誤表を第八冊(南北朝時代四)の冊尾に付す予定である。
本冊の主たる担当者は下記に示したが、フィルムを貸与された和泉市久保惣記念美術館、本所非常勤職員渡邊江美子氏以下多くの方々から協力を得た。その旨を明記して、厚く感謝の意を表する。
(例言二頁、目次二頁、本文二九五頁、本体価格五、八〇〇円)
担当者 林譲 川本慎自


『東京大学史料編纂所報』第41号p.43-44