48.財団法人柳沢文庫及び上野市立図書館が所蔵する近世前期史料の調査・蒐集

と三重県・上野市立図書館に出張し、近世前期史料の調査・蒐集を行った。調査に際しては、柳沢文庫においては常務理事杉田芳治・学芸員西村幸信の両氏、上野市立図書館においては館員の方々のみならず上野市古文献刊行会委員角舎利氏の御高配を賜った。記して感謝の意を表します。
【財団法人柳沢文庫】
 柳沢文庫は明治三十五年、柳沢保恵伯爵が大和郡山城内の邸宅の一部を開放して設立したものである。現在は柳沢家からの寄附を受け、財団法人郡山城史跡・柳沢文庫保存会が管理・運営をしている。同文庫には、柳沢吉保・富里・信鴻・保光などの年録や日記をはじめ、柳沢家・大和郡山藩政に関わる約二五〇〇点の史料が所蔵されており、その詳細は『柳沢文庫収蔵品仮目録』(柳沢文庫編、昭和五十八年発行)により知ることができる。今回の出張では主に、吉保に関係する近世前期史料の調査と、マイクロフィルム撮影による蒐集を行った。蒐集した史料は次の通りである。
(中略)
【上野市立図書館】
 伊勢津藩は、藤堂高虎が、慶長十八年に伊勢安濃津領と伊賀一国を併せ、また大和・山城の一部の領地等も含んで成立した。主城は津であったが、伊賀国上野城には幕末に至るまで城代が置かれ、藩の伊賀国支配の中心として機能した。第二次大戦における空襲により、津市に所在した多くの史料が失われてしまったが、空襲を免れた上野市には藩政史料が比較的多く残った。
地元の上野市古文献刊行会は、昭和四十九年の発足以来、これらの史料の校訂刊行事業を続け、それによって『永保記事略』『庁事類編』『宗国史』『藤
堂藩大和山城奉行記録 西島八兵衛文書』 『高山公実録』 『公室年譜略』等が次々に活字化されている。
 現在上野市立図書館には、上野の藩校崇広堂旧蔵本を初めとして津藩政関係史科が種々所蔵されている。寛延四年に藩主一門出雲家の藤堂高文により編纂された総合的な津藩史である『宗国史』は津藩政前期の研究に多く用いられて来たが、昭和十六年の最初の活字本(村治圓次郎撰集・上野教育会版)の底本となった出雲家蔵藤堂高文稿本は、藤堂伯爵家蔵本や津の藩校有造館本とともに戦災で烏有に帰している。本所では、藤堂伯爵家蔵本の一部について明治二十年に謄写を行っているのみである。したがって、上野市立図書館所蔵本(旧崇広堂本) 三十二冊は、現存する写本の中でも貴重であり、今回その全ての撮影を行った。『宗国史』を含め、今回撮影した史料は以下の通りである。
(中略)

                  (山本博文・小宮木代良・松澤克行)

『東京大学史料編纂所報』第38号