53.中国南京市・上海市所在日本関係史料の調査

二〇〇一年六月六日~十八日、中華人民共和国南京市および上海市を訪問し、十九世紀を中心とする日本関係史料の調査を行った。本調査には本学人文社会系大学院生(当時)の黄栄光氏、本所特別研究員の森田朋子氏の協力と参加を得た。
一 中国第二歴史档案館(南京市中山東路)
 中国第二歴史案館が所蔵する日本関係史料の調査を行った。なお、江蘇省案館(南京市)も訪問する予定だったが、この期間は改築工事のため閉館中。また事前連絡では、十九世紀の日中外交・貿易に関する史料はほとんど所蔵しないとのことであった。
 中国第二歴史案館は、基本的には辛亥革命後、中華民国以降の档案を所蔵する档案館である。档案館の入り口に守衛所があり、出入りは厳しくチェックされている。荷物はここに預けなければならない。閲覧許可を求める書類は事前に送付してあったが、その申請に基づいてその場で審査が行われ、閲覧証の発行を受けた。開館時間は午前八時から午後四時半まで。ただし、十一時半から二時まで昼休みとなる。土日は休館。
 閲覧室は事務棟(旧館)の奥にあり、かなり広いホール状の閲覧室に約六〇席、マイクロリーダー四台、パソコンも使用可能(電源は八つのみ)閲覧室で目録を確認後、登記(Reception)窓口で閲覧請求を行う。「閲覧答到表」には代表者が記名、カウンター後ろに並べてある茶表紙の目録から、個々人の希望史料を閲覧表に記入して申請する。ただし、出納は一日四回(八時二〇時・一四時・一五時半)と決められ、申請が午後になると出納は翌日になる。また、一点出納するごとに一〇元必要。複写は可能だが、閲覧・複写ともに許可は館長決済とのこと。
 ここでは海関総税務司署の档案(全宗号、六七九)を中心に調査した。これは、一八五九年に上海に清国政府が海関総税務司署を設立したとき以来の五三〇〇〇点余の档案からなっている。検索は、「海関総税務司署档案分類目録」から行なう。以下同目録索引を掲げる。ここには史料番号(案巻号)および目録番号が記されている。
(略)
二 復旦大学(上海市)
 復旦大学を訪問し、歴史系図書室(近代史史料室)と歴史地理研究所の蔵書類を見学し、日本関係史科の所在情報等につき情報交換する機会を得た。復旦大学は一九〇五年設立、北京大学と並ぶ主備大学の一つである。
 歴史系からは、仲介の労を得た沈中琦副教授をはじめ、呉景平教授(歴史系主任)、曹振威教授、戴鞍鋼教授が出席して懇談を行った。
 また、上海社会科学院歴史研究所の陳祖恩副研究員、復旦大学日本研究中心の徐静波副教授からも日本関係史科についての貴重なお話をうかがうことが出来た。お世話になった方々に謝辞を表したい。
三 上海図書館(上海市)
 東京都庁を思わせる大規模な現代建築が上海図書館であった。閲覧検索は全てコンピュータ化されており、総合閲覧室のほか、電脳学習室、参考工具書閲覧室、文献検索閲覧室が設置されていた。
 上海図書館では、「臨時参考閲覧証」 の発行をうけ、上海関係の史料集・文集、上海で発行された新聞・雑誌類、日本語文献類(調査リストは省略)などを調査し、必要なものはコピーで収集した。図書閲覧室は各分野別に、上海地方文献閲覧室、近代文献閲覧室、古籍善本閲覧室、古籍閲覧室、家譜閲覧室などに分かれており、そのほかに古文献陳列室、古文献修復技術展示室、金石書画陳列室、中国文化名人手稿館などがあった。別館として、外文文献閲覧室(徐家汇蔵書楼)があるが、これは現在非公開である。
四 上海市档案館(上海市)
 上海市档案館では、史梅定副館長、鳩紹霆研究館員にお話をうかがった。档案館は館内を改装中であったが、現在二一〇万巻の档案が所蔵されており、このうち九〇万巻が公開されている。歴史档案目録中心(センター)に上海関係機関が所蔵する档案類の目録を収集する計画があるが、まだ具体化していない。工部局年報(一八六一~一九四三)、公董局年報(一八七〇~一九四一)はマイクロ化作業中で、影印本で刊行する計画(全二三冊、現在刊行中)があるとのことであった。
 上海市档案館では十九世紀の公共租界(英米)、法租界(仏)関係の史料目録を中心に閲覧し、主として目録構造の把握につとめることとした。なお、工部局は一八五四年にイギリス租界(六三年にアメリカ租界と合併して公共租界)の行政管理機構として成立したもの、公董局は一八六二年に設立されたフランス租界の行政機構である。
(略)

                     (小野 将・杉本史子・箱石 大・保谷 徹・横山伊徳)

『東京大学史料編纂所報』第37号