東京大学史料編纂所

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刊行物紹介

大日本近世史料 市中取締類集 二十五

本冊には、旧幕府引継書類の一部である市中取締類集のうち高年御賞之部一冊、人宿取締之部一冊を収めた。
高年御賞之部は、天保十三年十一月から翌年八月にかけての高齢者褒賞に関する四〇件を収める。天保十三年十一月に北町奉行所与力から、下々まで改革の趣意を知らしめるための一策として、八〇歳以上の者に対する手当下付案が上申され(第一件)、翌十四年四月に南町奉行から老中水野忠邦に、日光参詣の無事終了を理由に、九〇歳以上の長寿者に対する手当下付の提案があり、五月には該当者三五名の調書が作成され、これらを受け老中から手当米の下付が指示された(以上、第二件)。このほかは、手当米請取方についての勘定奉行との掛け合い(第三件)、町年寄から浅草蔵奉行宛の長寿者御手当米請取証文(第四件)、長寿者御手当米の請取に関わる諸入用の扱いについての伺い(第五件)となる。第六件から第四〇件は、九〇歳以上の長寿者個々人について、町名主から提出された書上である。この三五件分は、原本に件名の記載がないため、長寿者一人分をそれぞれ一件として扱い適宜件名を付した。各人とも身元調査書と過去の人別帳の抜粋からなっており、第三件中の長寿者調書の元になった書上と思われる。
 人宿取締之部は、宝永三年六月から天保十四年三月までにわたる文書をまとめた一二件を収める。市中取締類集では通常各部の冒頭にその部を構成する件名が列挙されているが、人宿取締之部では件名の記載がないため、文書の内容に則して担当者が件名を付した。米価低迷と奉公人給金の上昇という状況の中、人宿二〇二人による組合と奉公人の給金が定められたのは享保十五年二月であったが(第六・七件)、組合結成以降も素人宿の取締や寄子の扱い、奉公人の不法な振舞等をめぐって様々な町触や申渡が出されている(第三・四・五・一一件)。給金については、番所詰めなど種々の名目による増賃銀があったほか、給金の渡し方を受け持つ部屋頭等が徳分をそこから得ていたため、町奉行所による給金引下げの指示はなかなか反映されなかった(第八・一〇件)。組合停止後も依然として給金・判賃等の引下げは進まず、奉公人の欠落や部屋頭の不正も続いた。天保十三年九月には、元番組人宿のうち陸尺宿屋の不正を指摘する張訴があったことを受けて定廻同心が風聞書を作成しており(第一件)、同年十二月には、従来の申渡を調査(第九件)した上であらためて人宿・奉公人の取締に関する町触が出された(第二件)。これによって、翌年には例年春に触れてきた定例の町触を見合わせ、以後も触れには及ばない旨が検討されている(第一二件)。
(例言一頁、目次二〇頁、本文三八四頁、本体価格六、九〇〇円)
担当者 佐藤孝之・杉森玲子


『東京大学史料編纂所報』第37号p.33-34