東京大学史料編纂所

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島根県立図書館・山口県文書館

 二〇〇〇年三月七日〜一〇日、島根県松江市の島根県立図書館、山口県山口市の山口県文書館に出張し、『大日本古文書益田家文書』の編纂参考史料の調査を行った。調査の内容を以下に記す。
島根県立図書館(島根県松江市内中原町五二)
 �旧『島根県史』編纂史料の調査  旧島根県史編纂史料は謄写本あるいは影写本の形で蒐集され、それらは現在島根県立図書館に収蔵されており、閲覧には写真が供されている。そこで「島根県立図書館郷土史料目録」(地方史研究協議会編『山陰地域の歴史的性格』一九七九年、所収)をもとに、石見地域の中世文書を中心に調査を行った。その結果『新修島根県史』に未収録の個人・寺社の伝来文書、あるいは個人・寺社としては収録されている文書だが、同書では一部翻刻が省略されている中世文書などを確認することができた。なお、書庫にて貴重書となっている影写本を一部閲覧させていただいたが、本所影写本とほとんど同じ形態のものである。
 �「国苑掌鑑」の調査
 「国苑掌鑑」は「安永四年乙未之冬十一月」成立の石見安国寺誌で、中世益田氏の安国寺充寄進状などを引用している事で知られている。島根県立図書館に写しが架蔵されており、今回これを調査した。なお、この写しは機械複写によるものであるが、原本の所在が現在不明なため、内容を知ることのできる唯一の本とのことである。
 以上の島根県立図書館の調査では、同館内田文恵・木村久美子両氏から御教示・御助力等を得た、記して感謝の意を表したい。
山口県文書館(山口県山口市後河原一五〇—一)
 �出羽(いづは)家文書の調査
  同館所蔵出羽家文書については平瀬直樹氏が詳しく紹介しているが(「旧長州藩士・出羽家文書および内藤家文書」『山口県文書館研究紀要』第二二号、一九九五年)、それによると同家は中世には石見出羽(島根県邑智郡瑞穂町)を本拠とした武士であり、戦国時代に毛利氏に属し、近世には長州藩士(御手廻組)になったという。『閥閲録』巻四十三出羽源八家として八四通の文書が収録されているが、出羽家文書原本は総点数四六二点、中世文書が二六点あり、そのなかには『閥閲録』未収録の中世文書も含まれている。石見の武士として規模は小さいものの、益田家文書と同様な構成を持つ文書群であり、特に比較的残存数の少ない石見守護・守護代からの文書が含まれる点では、花押形の比較等、益田家文書編纂上参考になる点が少なくない。
 �「益田譜録」(毛利家文庫二一巨室—三二)・『閥閲録差出原本』(毛利家文庫五七御什書—三)の調査
 『閥閲録』に次ぐ長州藩の藩史編纂事業であった『譜録』、および『閥閲録』とほぼ同内容ながら原本に関わる情報の書き入れがあるものも多い『閥閲録差出原本』について、それぞれ益田家分を調査した。
 以上の山口県文書館の調査では、同館百田昌夫・和田秀作両氏の御教示・御助力を得た。記して感謝の意を表したい。
  (久留島典子)


『東京大学史料編纂所報』第35号p.101