東京大学史料編纂所

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館林市立図書館蔵秋元文庫史料の調査

 一九九五年一月十一日、群馬県館林市の同市立図書館蔵秋元文庫中の江戸幕府奏者番関係史料を調査した。同館所蔵史料については、一九七五年にも本所から調査を行っており、所報一〇号に報告がある。今回は、前回調査された中でも、幕末の館林藩主秋元朝礼が慶応二年より幕府奏者番職にあったことから秋元文庫中に伝えられた桐箪笥二棹分の奏者番手留類(箪笥には「典謁記」と墨書してある)を調査した。
 箪笥内手留類の概要については、所報一〇号にもまとめてあるが、中心となるのは、「手留」と呼ばれる小型の折本であり、江戸城内等での奏者番が関わった儀礼の次第・進行を、詳細な図を書き添えて記述したものである。「手留」は、先任者の朽木綱張から引き継いで写したものが大半で、さらにそれ以前からの引継ぎを含め、文化文政期前後のものから確認することができる。今回確認した概数としては一一五〇点前後である。また、慶応二年から同三年にかけての江戸城内の日記や廻章類も多数箪笥内に納めてある。江戸幕府儀礼の実態を解明していく上で、質量ともに貴重な史料であり、今回は概要の確認のみにとどめたが、今後、写真撮影を含めた調査の進展をはかりたい。
 (小宮木代良)


『東京大学史料編纂所報』第30号p.32