大日本古文書 家わけ第十八 東大寺文書之十五

本冊は、東大寺図書館架蔵文書のうち、いわゆる「未成巻文書」の続き、第六冊目である。本冊には、寺領部周防国衙領の文書のうち、1|5|9から1|5|129までの文書を収めた。ただし、連接する文書は前例にならい原形に復して収録したので、文書番号でいえば六三七から七四一までの一〇五点となる。
 本冊の大半を占める史料は、近世の国衙領年貢勘文などである。一般に東大寺文書では一通の文書がばらばらに伝存することは多いが、この類の文書はとりわけもとの巻物の継ぎ目の糊がはがれ、一紙づつばらばらに伝存していることが多く、本冊の編纂上もっとも腐心したのはこの復元であった。いくつかの文書について、完全た復元にいたらなかったことを遺憾とするが、中世文書も含め、確実に連接していたことが明らかな文書については、ほぽ原状に復して翻刻することを得た。
 そうして復元しえた文書のうちとくに注目される文書は、中世文書でいえば六六八号の東大寺年預所下文土代と、七〇三号の周防国衙領田数等注文とであろうか。六六八号文書は東大寺大勧進に任ぜられた京都戒光寺の僧円瑜排斥事件に関わる、在地の動向を知り得る鎌倉時代後期の新史料であり、七〇三号は、永正年間の周防目代英憲が文明年間の帳面等を用いながら作成した国衙領の田数・分米の注文である。後者の一部は従来も知られている史料ではあったが、本冊により首尾が一貫したことになり、利用は一層容易になったといってよかろう。
 なお本冊でも、自署・花押等を便宜のため本文中の適切な箇所に網版で配置したり、参考のため文書の写真を挿入するなどの措置をとり、活字だけでは理解してもらいにくい部分の翻刻に留意したつもりである。
(例言一頁、目次九頁、本文三一六頁、価四、八○○頁)
担当者 千々和到

『東京大学史料編纂所報』第27号 p.71**