東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

大日本史料 第五編之二十八

 本冊には後深草天皇宝治2年の年末雑載および宝治年中雑載の史料を収めた。
 宝治2年年末雑載は、災異、神社、仏寺、公家、諸家、疾病・生死、学芸、荘園・所領、検注、年貢、訴訟、寄進、譲与・処分、去渡、売買、雑の16項目に分類して史料を収めた。各項目の中では関係する事項ごとに史料をまとめ、もっとも早い月日にかかる史料を有する群から順に配列した。すなわち次の通りである。
災異=火災、洪水、噴火
神社=鶴岡八幡宮、武蔵御嶽山、宇佐八幡宮、熊野山、祇園社、熱田社、龍田社、甲斐山梨郡上万力村大宮権現、厳島社、大神宮、春日社、鹿島社、香取社、宗像社
仏寺=高野山、延暦寺、興福寺、永久寺、台明寺、金宝寺、紀伊由良荘修禅寺、醍醐寺、東大寺、相模常楽寺、永平寺、高山寺、神護寺、園城寺、法隆寺、唐招提寺、西大寺、随心院、仁和寺、東寺、蓮光寺、丹波光明寺、承天寺、良忠、覚心、日蓮、智真、板碑、笠塔婆
公家=藤原定嗣参院、仁助法親王参院、藤原兼経参内、同参院、右衛門志任官
諸家=中原師家、藤原定嗣、藤原資頼・高雅、曽木光茂、藤原兼経、源親子、藤原宗雅
疾病・生死=疾病、生誕、死没
学芸=和歌、連歌、漢籍、聖教、音楽、銘文
 宝治年中雑載は仏寺と学芸の2項目に分類して史料を収めた。しかしもちろん、以上の分類・配列は便宜的なものに過ぎない。
 収載史料のうちのいくつかを紹介する。
 仏寺の項には道元、叡尊、日蓮、智真(一遍)の事績に関する史料を収め、学芸の項には親鷲の和讃撰述、道元の阿闍世王之六臣抄出の史料を収める。前冊宝治2年12月是月の第2条には蘭渓道隆の常楽寺入院に関する史料を収めたが、宝治2年という年に鎌倉新旧仏教の主要人物が顔を揃えていることが興味をひく。
 近年、紙背文書が注目されるようになったが、本冊にもいくつかの紙背文書を収めている。神社の項に収めた「兼仲卿記紙背文書」や訴訟の項に収めた「日蓮上人要文集裏文書」はすでに広く知られたものであり、仏寺の項に収めた「論義草紙背文書」は『奈良国立文化財研究所年報』(1984年度)に紹介されたものであるが、仏寺の項に収めた「日本国承和五年入唐求法目録紙背文書」、年貢の項に収めた「類句抄第十紙背文書」、訴訟の項に収めた「舞楽雑録紙背文書」などはこれまであまり知られていなかったのではないか。
 検注の項に収めた「葛原文書」隅田北荘作田検注取帳はすでに『和歌山県史中世史料一』および『鎌倉遺文』に掲載されているものであるが、あらためて原文書にあたって断簡の接合関係について検討を加え、できるかぎり復元につとめた。
 挿入図版には、学芸の項に収めた「明恵上人歌集」奥書を採用した。
(目次2頁、本文375頁、挿入図版1葉)
担当者 黒川高明・近藤成一


『東京大学史料編纂所報』第25号p.77