東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

大日本古記録 小右記 訂正一覧

 大日本古記録「小右記」全十一冊に対する補訂案の、一応の集成である。
 大日本古記録「小右記」は、一九八六年三月に完結したが、その後間もなく発行者である岩波書店から全冊を一括して重刷したいという申し出があり、本所もそれに応えて、翌一九八七年一月、同書の第二刷が刊行された。第二刷刊行に際しては、それまでの大日本古記録の重刷の例に倣って、象嵌と組直しと追補とによって誤謬や不備を補訂したが、この方式による補訂では、正誤表による補訂と異なり、旧版(この場合は第一刷)の所持者に補訂箇所を簡単に知る便宜を提供できないので、その点をどう解決するかが問題として残された。この冊子の刊行ははじめこの問題の解決のために計画されたものである。
 しかし、刊行を準備している間にも、第二刷でも改められていない補訂すべき箇所が見出されることはしばしばあり、それを無視することは担当者の気持として困難でもあり、また同書の読者・利用者に対して不当なことだとも思われたので、結局この冊子は、第一刷・第二刷双方を補訂する内容を持つことになった。
 補訂した箇所の数は総計約二六〇〇に達しており、その内容も多岐にわたる。その中には実用上それ程重要な意味を持たないものもなくはないが、たとえば「雨」と読んできた文字を「兩」と読み直した結果、禁制の内容が全く異なるものとなったり(三の一三〇ページ)、底本の文字を「丞」と読むことでは変りはないものの、それが書体の類似による「臣」の誤写であると気づいてそれを注記することで、内容上の矛盾が解消し(一の一〇八ページ)、式次第としての不自然さがなくなる(同一〇九ページ)といった、史料としての利用に大きく影響する補訂もまた少なくない。解題に対する補記なども、担当者にとっては意味の軽いものではない。
 ただ、第二刷の刊行は勿論、この冊子の作成も、大日本古記録「小右記」の本格的な改訂を目指したものではなく、もしそうであったら必要であったであろう時間も労力も投入されてはいないのであるから、この冊子での補訂が極めて不十分なものであるのは言うまでもない。この冊子を刊行する目的は、今日までにかなり偶然に左右されながら見出されてきた補訂の試案を、取敢えず集成することで、同書第一刷・第二刷の現時点での理解と利用とに少しでも資したいという、ささやかなものにとどまるのである。
(例言一頁、本文五七頁、附録五頁、岩波書店発行、非売品、同書店から申し込み者に頒布)
担当者 龍福義友


『東京大学史料編纂所報』第24号p.73