大日本古記録「猪隈関白記」六

本冊は最終冊なので、本文と併せて、解題及び記主藤原家実の年譜と略系を収め、更に全六冊の記事の索引を載せた。
このうち本文は、(一)具注暦断簡、(二)古写本断簡、(三)補遺�・補遺�、である。
 (一)具注暦断簡は、嘉禄元年・同二年・安貞二年・貞永元年のものである。いずれも第五冊に収めた建保五年・承久元年・貞応元年の具注暦と同じく、陽明文庫の蔵書のうち、近衛家十三代の当主近衛政家が「後深心院記」その他の筆写の用紙としたものや、「具注暦断簡」又は「年代不明ノ古記」などとして、バラバラの状態で諸函に分置されているものから選び、整序して収載した。
 具注暦の実例としては貴重であるが、記事の内容は、本冊の分は天候に関するもののみである。
 (二)古写本断簡は、承元三年・安貞二年・嘉禎元年の記である。陽明文庫の蔵書のうち、記主不明のまま、「日記切」・「日記断簡」・「日記記録之切」などと目録に記されてバラバラになっている断簡から、家実の記と判定できたものを抜き出して収載した。
 (三)補遺�は、東洋文庫所蔵の「改元部類記<猪隈関白記、自正治至元仁>」(広橋本)により元久・承元・建保・承久・貞応・元仁の分を収載し、次に、宮内庁書陵部所蔵の「続暦」(柳原本)により、承元四年の分を収載した。
 補遺�には、陽明文庫所蔵の断簡により、建久九年四月(自筆本)・建永元年十二月・承元二年四月・建保五年十二月の記を収めた。
(例言二頁、目次二頁、本文一三一頁、解題九頁、年譜二七頁、略系二頁、索引九六頁、図版一葉、岩波書店発行)
担当者 近衛通隆・石田祐一

『東京大学史料編纂所報』第19号 p.55**