東京大学史料編纂所

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東北地方のキリシタン史料調査

 昭和五十三年十月十一日から十七日までの七日間、岩手県北上市、青森県下においてキリシタン関係史料を調査し撮影した。  東北地方に残存するキリシタン関係史料・文献の調査・蒐集は、本年度で第三年目になる。本年は青森県下を主要な調査地とし、昨年調査もれの岩手県北上市での調査をも行なった。
 北上市では市立図書館所蔵の鬼柳家文書を確認し撮影した。小型の桐箱には、「宗門目録認様案詞番書」と記してあり、文化・文政・寛政期の宗門改、宗旨書上、寺請状、宗門目録等の様式に関する案文等十三点が納められている。また当市では、市史編纂員の周東真雄氏の好意によって氏蒐集の文書の写本および写真十五点を見せて載き、その一部を撮影した。以下の如くである。

 一、正保貳年五月廿五日東山大篭村吉利支丹帳(写)
 一、下伊沢宝永元年人数御改(写)
 一、元禄六年六月晦日転切支丹類族存命牒(写) 原蔵者 水沢市東上野町三浦定雄氏
 一、元禄七年七月二日栗原郡石越村住居之類族二季本牒(写)
 一、享保五年十一月廿九日古切支丹存命帳(写)磐井郡関係三点、江刺郡関係一点
 一、享保五年十一月廿九日磐井郡金澤村百姓古切支丹縫殿類族死失帳(写)
 一、松平陸奥守領内古切支丹不轉以前之病死仕候覚(写真) 原蔵者 水沢市小幡伸吾氏

 青森市においては県立青森図書館と市立図書館を訪れたが、全国図書館大会開催のため調査することができなかった。
 弘前市立弘前図書館においては、幕府より津軽氏に対するキリシタン取締りおよび異国船取締りに関する奉書十五点十七通、御日記方で編纂の「御用格」のうち、キリシタン類族に関するものについてのみ調査し撮影した。また排耶書「伊吹もぐさ」(一冊)の所在を確認した。これは、「南蛮寺物語」の類本かと思われるが、他所に所在するか否かは今後調査する必要がある。以下に撮影史料目録を記す。

 きりしたん宗門之者捕候儀ニ付御奉書 十二月五日                      一通
 島原天草一揆之儀ニ付御奉書 〔寛永十四年〕十二月三日                   一通
 津軽きりしたんの者共死罪之儀御奉書 八月八日                       一通
 きりしたん宗門御制禁御奉書并條々 寛永十六年七月二十三日                 二通
 きりしたん宗門入念可相改之儀御奉書 正月廿七日                      一通
 きりしたん三木運四郎死罪之儀御奉書 正月廿七日                      一通
 きりしたん宗門之者有之由訴人出候に付御奉書 十一月二十四日                一通
 南蛮伴天連いるまん等白状之趣に就御奉書 九月十一日                    一通
 きりしたん宗門之者有之由訴人申出詮議方之儀御奉書 二月晦日                一通
 森元功白状 伴天連市左衛門白状                              二通
 異国船着岸之節領内無油断万事堅可申付儀御奉書 二月廿二日                 一通
 長崎江黒船着岸に付御奉書 八月十日                            一通
 阿蘭陀船着岸之儀御奉書 十二月二日                            一通
 異国之大船奥州并九州筋漂海上之儀に付御奉書 十月二十日                  一通
 御用格(架番号 TK—209—1)
  第十九 鳥獣、切支丹類族                                一冊
 御用格 従寛政三年至文政七年(TK—209—2)
  第十九 鳥獣、切支丹類族                                一冊
 御用格 従嘉永元年至安政六年(TK—209—4)
  第十九 鳥獣、切支丹類族                                一冊
 古切支丹類族土手町中田庄三郎子権太郎死骸見分之覚 元禄九年六月晦日            一紙
 小泊村〔長松〕切支丹類族                                 一冊
 切支丹宗門御証文 宝永元年                                一紙
 切支丹類族病死之覚 明和二年十二月二日                          一紙

 北津軽郡市浦村では教育委員会を訪ね、『東日流外三郡誌』のコピーを見せて載いた。これは、寛政元年から文政五年にかけて秋田孝季と和田長三郎が安東氏に関する資料を全国的に蒐集し編纂したもので、津軽のキリシタンについて若干の記事が見られるが、その史実については検討すべき点が多々ある。(五野井隆史)


『東京大学史料編纂所報』第14号p.96