東京大学史料編纂所

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彰考館史料調査

 昭和五十三年十一月二十九日から十二月二日まで、水戸市見川一ノ一二一五ノ一水府明徳会(彰考館)所蔵史料の第二回調査採訪を行なった。前回に引き続き中世近世の日記・典籍および系図類を主として調査・撮影した。採訪史料は以下の通りである。

一、両国書籍志                                       一冊
一、林下集                                         一冊
一、類題古詩                                        一冊
一、一禅付録                                        一冊
一、花月百首 江戸歌合、太田系図、太田道灌京進和歌                     一冊
一、和漢聯句 北野法楽連歌、高野連歌                            一冊
一、和漢聯句称名院右府七十賀記他                              一冊
一、東国紀行 宗牧、(『八洲文藻』五七所収) 上下                     二冊
一、飛鳥井雅親集                                      一冊
一、興福寺略年代記                                     一冊
一、興福寺延年舞式他                                    一冊
一、會津四家合考 自巻四至巻八巻一—三欠                          二冊
一、歌合部類 十四、按察親長卿家歌合他                           一冊
一、護国寺供養記他                                     一冊
一、桂林遺芳抄東坊城利長                                  一冊
一、梅域録寛政四写                                     一冊
一、除目寄合鈔甘露寺親長                                  一冊
一、當時勤仕諸官人職掌中原職資                               一冊
一、釋家官班記                                       一冊
一、竹居清事文政六写                                    一冊
一、竹居清遊集文政六写                                   一冊
一、宿蘆稿元祿六写                                     一冊
一、�竹残藁                                        一冊
一、六如〓詩抄近江、釈慈周                                 一冊
一、三益詩集                                        一冊
一、梅渓集乾坤、延宝八写                                  二冊
一、補庵絶句                                        一冊
一、貫首拝賀記                                       一冊
一、新任辨官愚抄他                                     一冊
一、釋家官班濫觴記他                                    一冊
一、京都将軍家譜                                      一冊
一、足利傳                                         一冊
一、足利家傳                                        一冊
一、一會和歌纂第二                                     一冊
一、船田前記元祿七写                                    一冊
一、西山書目元祿八年以後                                  一冊
一、親王摂家座次記録貞享元写                                一冊
一、本圀寺志                                        一冊
一、関東五山記                                       一冊
一、献索記永正十八年                                    一冊
一、雪村和尚行道記                                     一冊
一、諸寺過去帳抜萃東寺・大徳寺他                              一冊
一、和光院過去帳文化十五写                                 一冊
一、和光院土貢帳                                      一冊
一、久昌寺宝物帳                                      一冊
一、久昌清規                                        一冊
一、赤浜妙法寺過去帳 自応永三十四至元祿七                         一冊
一、往生講式他                                       一冊
一、山門中堂供養記元祿二写                                 一冊
一、高野筆記                                        一冊
一、中村系図                                        一冊
一、吉田系図                                        一冊
一、綾氏系図                                    以下二部一冊
 安倍正統支族系譜
一、冷泉系図                                      折本一帖
一、大中臣系図                                     折本一帖
一、佐竹末家系図                                      一冊
一、佐竹宇都宮系図                                     一冊
一、医道系図                                        一冊
一、南朝系図                                    以下十部一冊
 明珍歴代族譜                                    静幽堂叢書
 早乙女譜
 市口明珍家系
 市口正統
 異本明珍系図
 明珍脇釣
 早乙女系図
 明珍家系図
 作鞍鐙判鑑假面譜
一、大友系図                                        一冊
一、郡須七系                                        一冊
一、小野崎氏略系                                      一冊
一、島崎文書系図                                  以下二部一冊
 岡田系図
一、細川系譜家伝録                                     六冊
一、福島文書                                    以下三部一冊
 立花紹運戦死考
 中八院古戦考
 

本所架蔵『舊武家手鑑』(前田育徳会所蔵、本所写真焼付本架蔵番号、六一七一・〇二・二四)全三冊中の第二冊六十二丁に、大館伊予守尚氏の筆跡とする極札の付いた詠草断簡一葉が収められている。
 「詠三首和哥
       義—
    雲端冬月
  さためなきしくれの雲のうきまよひ月も
  里わく冬のよの空
    海邊松雪
  さしあかすよさのうら風をとたてゝ雪ふ
  りつもるあまのはしたて       」
とあり、もと三首の内二首と思われる。この作者「義—」が、あるいは足利義政かと推測するとして、『私家集大成』所収の義政集などにみえない詠草で明証なく、その年次も不明であった。
 ところで今回採訪したなかに『一會和歌纂第二』(巳十一・〇七一五九)一冊がある。もと何冊があった内の一冊で、年代も規模も異なる歌会の詠草を雑多に纂集したものである。
 ここに「長禄二年室町殿月次」と題する十八丁ほどの記事があり、その中に「長禄二年五月十三日月次御会」の記事が収められている。その冒頭に同一の書式でさきの二首が載っており、さらに第三首が「隔遠路恋」と題して収められている。
 これによって「手鑑」の断簡は、長禄二年五月十三日の幕府月次御会における詠草であり、「義—」が義政であったことがわかるのである。
 さらにこの月次詠草の末尾に「右此一帖者於打聞間隙有書寫之/被本二帖長禄年中御月次実相院/准后増運自筆品経和歌者入道大納言雅親卿自筆也/文明十五年五月十日   尚氏」と書写奥書があり、〔彼カ〕(以名判形トス) 彰考館本は大館尚氏書写本の重写本であることがわかる。
 「手鑑」の断簡が極札のいうごとく、大館尚氏の手跡であるならば、この尚氏書写本の原断簡にあたると考えられ、その成立は奥書によって文明十五年五月十日である。
 なお「手鑑」が第一首の末尾の字を「空」とするのを「纂」では「月」としている。また「手鑑」に欠く第三首は
 みたれわひおもかけをのみ恋ふやうき
  みちのくのまのゝかやはら
とみえる。因みにこの日の題者は飛島井雅親、読師日野勝光、講師滋野井教国であった。
 以上、加陽・水府の奇遇黙しがたく、報告に付して紹介した。(小泉宜右・今泉淑夫・酒井信彦)


『東京大学史料編纂所報』第14号p.71