東京大学史料編纂所

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所報―刊行物紹介

大日本近世史料 編脩地誌備用典籍解題 五

本冊には、前冊にひきつづき別紀第十八・十九、及び遊紀第一から第四まで、原本五冊分を収めた。本冊に収録した別紀は、西海道の各国と琉球である。始めに西海道を掲げ、次に筑前より筑後・豊前・豊後・肥前・肥後・日向・大隅と南下して薩摩に至り、薩摩に琉球を附し、続いて壱岐・対馬で終っている。地誌・絵図の点数は左の通りである。
西海道五点(内、図二点)、筑前十点(内、図一点)、筑後三点、豊前六点、豊後九点(内、図一点)、肥前三十九点(内、図七点)、肥後九点、日向三点(内、図二点)、大隅一点(内、図一点)、薩摩五点(内、図三点)、琉球十二点(内、図二点)、壱岐一点、対馬五点(内、図三点)。合計百八点(内、図二十二点)。ここで目をひくことは各国ともに十点以内であるが、肥前のものが三十九点と群を抜いていることである。三十九点のうち、長崎に関するものだけで二十七点を数える。また大部のものでは、貝原篤信の「筑前続風土記」二十八巻、田辺茂啓の「長崎実録」十六巻、森本一端の「肥後国志」二十二巻、坂上登(田村藍水)の「琉球産物志」十五巻、吉野秀正の「壱岐国続風土記」百十八巻等が掲げられる。
遊紀の部には、旅日記・紀行を収めている。その前書には、書目配列の順をしるしたのち日記・紀行が地理研究に役立つ事、そのため世にある大概を官庫に蒐集した事を述べている。書目の配列は、畿内七道にはよらず、その成立の年月により、東西南北の字を冠するものは一括して次に置き、終りに撰者・年月不明のものを集めてある。その点或る国の紀行をみるには不便であるから、編者は別に「遊紀目録国分」を作っていて、それは本書の第六冊に収録される。
「土佐日記抄」を始めとして、「鴨長明道之記」、「氏郷紀行」、「沢菴鎌倉記」、「奥細道」、「菅笠日記」、「東遊記」、「西遊旅譯」等著名なものがあり、一方撰人不明のものでも「木曾記」のように、「是記かりそめの作に出るといへとも、元和間の書世に稀なる所、地理書中において実に荊璧といふへし」と評価されている。なお「阿仏坊道記」、「あまのすさみ」等女流の作品も七点収められている。
担当者 瀬野精一郎・山口静子・鈴木圭吾
(例言一頁、目次四頁、本文三八一頁)


『東京大学史料編纂所報』第12号p.78