東京大学史料編纂所

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対馬宗家文庫調査

 (一)昭和五〇年七月二十三日より三〇日の間、長崎県下県郡厳原町所在の宗家文庫の対馬藩史料の調査を行った。
 対馬藩史料を大量に保管しているのは、国会図書館・慶応大学附属図書館・厳原町宗家文庫・韓国国史編纂委員会並びに本所である。在韓国の史料は宗家文庫の史料群と同系統で、厳原の藩庁に伝来されたものである。これに対し国会図書館及び本所の史料群は江戸藩邸に保管されていたものである。いづれも多量の「毎日記」と題する書冊を含むが、これは、所轄の職掌毎に作成された記録で、寛永から文久に及んでいる。従って、いづれかが副本というものではなく、記事の照応はあるが別途に作成されたもので、集成する必要がある。また、国会本が分類紀事大綱の如き索引的用途をもつ編纂物を多種に亘って含有しているのに対し、宗家文庫及び本所の史料群にはこれらがなく、一方宗家文庫には幕府・他家或いは家臣間の往復文書の原本及びその控として作成された史料より構成されているのが特色である。
 宗家文庫の史料群は、大別して、(一)毎日記群約一六〇〇冊、(二)家臣団史料群(御馬廻御奉公帳、大小姓御奉公帳等)約一五〇冊、(三)各個別(藩制・経済・司法・以酊庵・鉱山・外交等)史料群約一〇〇〇冊、(四)典籍群約二〇〇冊である。現在毎日記群は、所轄役所(表書札方、海陸方等)別の整理は完了していないが、とにかく年代別に並べられて居り、幸いに県及び厳原町の協力で整備が実施されることになっている。が、(二)〜(四)に就いては着手の予定も全く将来に任せられている。これを誤聞してか、宗家文庫整備近しと誤認の向きもあるようであるが、大量、及び複雑性のため容易な仕事ではない。頼むべからざることを当てにすることは訂正しなければならない。(三)の史料群は、旧藩時代末期の分類に従ってそれぞれブロック毎に積み重ねられているが、明確ではなく、錯雑がみられ、端から逐次採訪は不可能の状熊であった。よって、この中から、基本史料の選別、採訪史料の抽出を主とし、且つ、(四)の調査も併せ実施した。湿潤酷暑の裡に多大の労働をも要したが、次年度の採訪実施の準備を完了することができた。重複を避け、採訪リストは次号に収載の予定である。
 尚、多大の御理解を賜った所蔵者の宗武志氏及び現地管理の津江篤郎氏に篤く感謝の意を表する。(山本武夫、村井益男、橋本政宣、長谷川成一)


『東京大学史料編纂所報』第11号p.84