東京大学史料編纂所

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正倉院出張報告

 例年の如く、正倉院の曝凉期間中に、昭和四十二年十月二十九日から十一月五日まで、正倉院に出張して正倉院文書の調査を行った。ここ数年来、正倉院文書の現状の確認を主目的として、正集を中心に、文書の排列・表裏の関係・各紙の寸法・形状の特徴・継目殊に糊代部分の状態などの外形調査を進めて来たが、本年は先ず正集の未調査分を片付けて、正集の外形調査を一通り終了した。
 但し、正倉院文書は現在多くの断片に分れており、それぞれの断片に接続する部分が、全八百巻中のどこかに存在する可能性もあるという、いわゆる接続の問題がある。そこで次に、正集を中心として、内容や形状から、これに接続するかと推測される諸断片を多数調査してその確認につとめた。その結果は、当然のことながら、接続が確認出来るもの、可能性はあるが確認に至らないもの、接続が成立しないと認められるもの等があり、又、接続の調査中に、継目部分や界線の状態などについて、今までの調査結果に更に補足すべき点を発見することも少くなかった。
 (川崎庸之・土田直鎮・皆川完一)


『東京大学史料編纂所報』第3号p.78