2年目である2009年度は、前年度来の成果をまとめるとともに、一次史料の調査収集およびその分析作業を中心的な課題として研究をすすめました。具体的には以下のとおりです。

(1)『大日本古文書 高野山文書』のフルテキストデータベース化

第5冊から第7冊について業者により入力し、謝金(雇用)によるデータ校正を経て、第6冊までをWEB上で公開しました。

(2)『高野版』の調査

中世高野山から発信された教育普及活動の痕跡として、木版印刷による仏教教理のテキスト出版物(いわゆる「高野版」)に注目し、醍醐寺・和歌山県立博物館において高野版を調査し、高野版の伝来・受容の過程を研究しました。

(3)寺院聖教の調査

京都市醍醐寺・実相院および香川県萩原寺、鎌倉浄光明寺などの寺院において所蔵史料の原本調査および写真撮影を行い、中世寺院における学習活動の実態を追究しました。また、研究代表者高橋は、日本女子大学・大学院文学研究科主催のシンポジウム『醍醐寺の歴史と文化財』において報告を行い、醍醐寺に素材をとりつつ、中世寺院における諸活動が近隣社会と密接な関連を有していたことを指摘しました。

(4)京都における五山禅僧の教育普及活動のデータ化

室町時代の貴族の日記における五山禅僧の所見を収集し、データベース化をすすめました。『晴富宿禰記』・『言国卿記』・『十輪院内府記』・『元長卿記』等について入力をおこないました。

(5)ヨーロッパ中世の大学に関する研究

連携研究者のアドバイスをうけつつ、基本的な研究図書の収集につとめました。