『起承転々怒っている人、集まれ!』

佐々木忠次
出版社:新書館
発行:2009年2月
ISBN:9784403231117
価格:¥2520 (本体¥2400+税)

 贅(ぜい)をこらし粋を尽くした、舞台の大輪の花たるオペラ。この総合芸術を日本にも根付かせようと、
海外の一流歌劇場の引っ越し公演を次々と成功させているのが著者であり、20年にわたって書き継が
れた彼の率直な想いが一冊の本になった。

 様々な難問がある。貧しすぎる文化行政、参入する不誠実な招聘(しょうへい)元、新国立劇場をめぐ
る諸問題。リーズナブルではあれやはり高額なチケット、セットにしての販売方式。だが、いま佐々木オ
ペラに集う観客を見よ。評論家がいう「祝祭空間」が気恥ずかしくなるごく通常の装いで、サンドイッチを
頬張(ほおば)り散文的に腹を満たす彼らだが、鑑賞力でも熱気でも、やわか他にひけをとるまい。この
「見巧者」を鍛え上げたのは間違いなく著者である。家路につく彼らの充足した表情は、よりよい舞台を
呼ぼうと東奔西走する著者の奮闘の賜物(たまもの)である。佐々木さん、本当に有り難う!(新書館、2400円)

評・本郷和人(日本中世史家)

(2009年4月20日 読売新聞)