【史料種別】 原本・古写本類(0架)
【請求記号】 S0071-50
【書名】 尾張国郡司百姓等解文
【著者名】
【解題】  永延2年(988)に、尾張国の郡司や有力農民らが、国司の長官である尾張守藤原元命(ふじわらのもとなが)の暴政を朝廷に訴え、罷免を求めた文書。この時期は、受領(ずりょう)と呼ばれる国司の最上席者(通常は守)が国の行政全般を委任され、各種貢納などの定められた職務を果たせば、国内支配はおおむね裁量に任される体制となった。受領は、配下である郎等を引き連れて下向し、課税の対象や税率を操作するなどの強引なやり口で国内の富の収奪に努め、巨利を得た。それによって私服を肥やすとともに、そうした富が国家財政を支え、上級貴族に還流された。本史料は鎌倉時代にさかのぼる古写本の一つで、江戸時代末期には東大寺に伝来していた。全31条のうち冒頭の1条から5条の途中までを欠き、また末尾の2紙は応長元年(1311)に補写したとの奥書がある。補写部分を除き、嘉元2年(1304)の具注暦(ぐちゅうれき)と同3年の見行草(げんぎょうそう)(暦を計算する際に出てくる主要な数字を表示したもの)の紙背を用いている。
 〔参考〕『新修 稲沢市史』資料編3(1980)。阿部猛『尾張国解文の研究』(新生社 1971)、桃裕行『桃裕行著作集』7(思文閣出版 1990)。
〔釈文〕
(第6条)
「6」(異筆)
一、請被裁断所進調絹減直并精好生糸事
右、両種貢進官物定数具録官帳、但疋別所当料田、先例二町四段、代米四石八斗也、然而絹実所進之日、所定納直米疋別一町余、亦至精好之糸、責取当国之好糸、織私用之綾羅、挙買他国之麁〔糸脱〕、備貢御〔官〕之例進、抑蚕養之業、進退更不任心、或国吏令得蚕養、而不登年穀、或国吏令登年穀、以不宜蚕養、而当任守元命朝臣着任以降、蚕養業不可也、是只絹減直糸精好所致歟、専城之吏、忠節已空、分憂之職、牧宰永絶、所謂傾国之讎、害人之蠱、豈過於斯哉、望請
蒙裁糺、被召問其旨、兼亦被改任良吏矣、


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