3−2)漉き返し紙の復元

下記について漉き返し紙を作成した。

1)
生漉き和紙

  A
紙漉きの前に紙料を洗浄しない紙(柔細胞・非繊維物質を含む)

  B紙漉きの前に紙料を洗浄した紙(柔細胞・非繊維物質を含まない)

  Cチリ取りの際に出た原料を紙打ちして漉いた紙

2)漉き返し和紙

  A白地和紙(1回目試作紙のうち洗浄した和紙と洗浄していない和紙の混合)

  B墨付和紙(1回目試作紙のうち洗浄した和紙に墨書きした和紙)


◆墨書きB

 ・和紙の約10%の墨書きを行った。

◆煮熟

・(A)……約1時間30分。40分後に煮え具合を確認。木灰にて煮熟。和紙が水中で分解しないよう布袋に入れて煮た。

     

・(B)……木灰にて煮熟。和紙が水中で分解しないよう布袋に入れて煮た。
      煮ても和紙の白い部分のみが茶色に染まり、墨書き部分はくっきり残っていた(なお、この墨書きは修復室メンバーによる墨書きです。古文書の墨跡ではありません。万が一の誤解をさけるため、念のために注記します)。


     

◆紙出し・離解

・(A)

     紙出し(繊維の洗浄)……繊維を解すように洗浄。木灰の色が落ちて白くなった。

     
     洗浄後の繊維(左)と洗浄前の繊維

     →離解……ナギナタビーターを使用して繊維を離解した。5分程度(本来は15分程度)。

     

     →紙出し……ビーターで離解したものをさらに洗浄した。前工程の紙出しよりさらに白くなった。
          夏場は紙の腐敗が早いので冷蔵庫に保存。


・(B)


     紙出し……洗浄しても大きい墨の塊は目に付くので、それを除去した。

     

     →離解……ナギナタビーターを使用して繊維を離解した。15分程度。夏場は紙の腐敗が早いので冷蔵庫に保存。

◆紙漉き


     

・簀目25本……縦揺すりのみ。(AB

  簀目20本…横揺すりをいれる。(AB

  簀目25本…溜め漉き風。(AB

・薬品付けトロロアオイを使用。

・横揺すりを入れる場合は、化粧水と捨水だけが縦方向で、それ以外は横揺すりになる。

・繊維を汲みこむ量は通常
45回だが、ネリ具合によって変わる。
 ネリが多い場合は漉き舟に均一に分散しているため多く汲み込み、少ない場合は汲み込み回数は減る。
 今回はネリを一定にして、漉き始めを薄くして徐々に厚くする方法をとったため、汲み込み回数は一定ではない。

◆脱水

3時間程度。生漉き和紙と共に行った。

・漉いた和紙を一晩おいた後、ジャッキを使用して水分を抜く(本来は一日かけて水分を抜く)。
 夏場は紙の異臭や変色してしまう。

◆乾燥

・天候不順のため、長谷川和紙工房で後日行った。