授業の概要・到達目標
《日本中世絵画史料論》
優れた芸術の歴史としての美術史とともに、過去を知るための素材として絵画は参照されてきた。とくに日本中世史の分野では、いわゆる「社会史」の潮流のなかで対象とする史料ジャンルが拡大し、絵画史料の研究はその一翼を担った。本講義では、そうした先行研究も紹介しながら現在の研究段階を把握し、さまざまな前近代日本の絵画史料に触れる機会にもしたい。ただし扱える対象は限られ、今期は国立歴史民俗博物館所蔵『聆涛閣集古帖』(近世の好古図譜)と16世紀成立の「洛中洛外図屏風」を中心とする。
授業内容
第1回:『聆涛閣集古帖』の概観
第2回:『聆涛閣集古帖』の複製技法―モノを資料化する―
第3回:見学課題1
第4回:『聆涛閣集古帖』から拓かれる課題(1)―乗輿―
第5回:『聆涛閣集古帖』から拓かれる課題(2)―扁額―
第6回:「洛中洛外図屏風」の概説
第7回:トンデモ解釈に陥らないために(1)―小谷量子『歴博甲本洛中洛外図屏風の研究』の誤謬―
第8回:「洛中洛外図屏風」歴博甲本に描かれた犬馬場
第9回:「洛中洛外図屏風」歴博甲本に描かれた能舞台
第10回:「洛中洛外図屏風」上杉本の研究史
第11回:トンデモ解釈に陥らないために(2)―小谷量子『上杉本洛中洛外図屏風の研究』の誤謬―
第12回:「洛中洛外図屏風」上杉本に描かれたモチーフを掘り下げる
第13回:いま見られる作品から
第14回:見学課題2/史料編纂所の見学・図書室利用
※その時々で原物を見られる作品を扱うなど、内容や順序に変更はありうる。
履修上の注意
過重な負担にならない範囲で博物館・美術館での見学を課すつもりであり、陳列されたモノや展示企画の意図を読み取るとともに、自身の課題発見に結び付けてもらえれば幸いである。知識それ自体はもとより、絵画史料論の方法・見方を講義ではお伝えしたい。
準備学習(予習・復習等)の内容
前近代日本の絵画史料に限らず、身の回りのさまざまな視覚表象を批判的にとらえる視点を鍛えて下さい(例えば、TV・Web・電車内のCM/広告などが、言葉と画像とをどのように構成して、誰が誰に向けて何をどのように訴えているのか、どのような文脈に置くと、それが良く理解できるのか)。
教科書
参考書
黒田日出男『増補 姿としぐさの中世史』(平凡社ライブラリー、2002年)*「図像の歴史学」を収録
石上英一編『日本の時代史』30・歴史と素材(吉川弘文館、2004年)*藤原「中世絵画と歴史学」を収録
藤原重雄『史料としての猫絵』(山川出版社、2014年)
ピーター・バーク(諸川春樹訳)『時代の目撃者 資料としての視覚イメージを利用した歴史研究』(中央公論美術出版、2007年)
吉田ゆり子・八尾師誠・千葉敏之編『画像史料論 世界史の読み方』(東京外国語大学出版会、2014年)
成績評価の方法
平常点(コメントシートなど)40%
レポート(見学課題+期末)60%
その他
講義で直接扱うのは、
・国立歴史民俗博物館 企画展「いにしえが、好きっ!-近世好古図録の文化誌-」(2023年3月7日~5月7日)
https://www.rekihaku.ac.jp/exhibitions/project/index_next.html
分野として重なるものに、
・神奈川県立金沢文庫 特別展「金沢文庫の肖像」(2023年3月31日~5月21日)
https://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/bunko/tenji.html
・根津美術館 企画展「救いのみほとけ-お地蔵さまの美術-」(2023年5月27日~7月2日)
https://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/schedule.html
が見込まれます。また東京国立博物館の平常展(総合文化展)には、キャンパスメンバーズhttps://www.tnm.jp/modules/r_free_page/index.php?id=167で在学中は無料入館が可能です。
「観仏三昧」http://www.kanbutuzanmai.com/も情報収集に有益です。